Project/Area Number |
19K13138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
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Research Institution | The University of Tokyo (2022-2023) Yokohama City University (2019-2021) |
Principal Investigator |
速水 淑子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70826099)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2019: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 女性戦士 / 市民社会 / ジェンダーと「人種」 / インターセクショナリティ / グローバル化と市民社会 / ジェンダー / 植民地言説と女性像 / 「混血」女性の表象 / アマゾネス / 市民社会とセクシュアリティ / 18/19世紀移行期 / 18・19世紀移行期 / ハインリヒ・フォン・クライスト / 18/19世紀転換期ドイツ語圏文学 / ナショナリズムとジェンダー |
Outline of Research at the Start |
本研究は、18/19世紀転換期ドイツ語圏で流行した「女性戦士」を扱う文学と、当時形成されつつあったナショナリズムとジェンダー規範の関係ををあきらかにする。同時に「女性戦士」ないし「アマゾネス」がヨーロッパ思想史において果たした役割を考察し、それが食人および獣姦と並んで、非西洋世界の「野蛮」を示すイメージとして用いられてきたことを示す。具体的な作品としては、ハインリヒ・フォン・クライスト『ペンテジレア』、ホルバイン『ミリナ――アマゾネスの女王』(1806)、ツァハリアス・ヴェルナー『ヴァンダ――サルマタイの女王』(1808)、クレメンス・ブレンターノ『プラハの建立』(1814)を中心に扱う。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023度(本研究第5年次)は以下の2点について研究を進めた。 第一に、ハインリヒ・フォン・クライストの小説「聖ドミンゴ島の婚約」(1811)における戦う女性の表象について、同時代のドイツ語圏におけるジェンダー言説、家族規範、性規範、生殖規範、「人種」言説、植民地言説等を参照しつつ分析した。研究の結果、同小説においては左記のような諸言説が交差し合う形で、権力性を帯びた複数の物語が機能していることが明らかになった。さらに、こうした物語と同時代の作品(ケルナー『トーニ』、ゲレルト『インクレとヤリコ』)を比較し、複数の権力性を帯びた物語が特定の時代・地域的背景のもとで交差すると、「高貴な未開人」「コロニアル・ラブ・ストーリー」「二元的な人生選択」といった、時代・地域に典型的な物語が生まれることを示した。本研究の成果は、2023年6月のシンポジウム「インターセクショナリティ――新たな地域文化研究の可能性」において発表し、発表報告をもとに論文を執筆した。 本研究の広義の目的は「市民社会」の理念が持つ排除と抑圧の契機を、その形成期にあたる18/19世紀転換期に遡って明らかにし、それによって現代における「市民社会」理念の限界と可能性を考察することである。その観点から、これまで、20世紀初頭および現代の市民社会の在り方を、アーレント、マンハイム、ハーバーマスを手懸りに論じてきた。本年度の成果の2点目は、この研究の延長上にあり、アーレントに関するドイツ語での口頭報告(於:韓国・中央大学)および、ハーバーマスの世界社会立憲化論に関する論文1本の発表を行った。18/19世紀転換期研究から派生した本研究において、「物語」と「現実」の間の懸隔が現実変革の推進力となるという知見を得、クライスト研究に応用することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間を延長した2年目にあたり、研究支援期間5年目にあたる。本年度は本来これまでの成果のとりまとめを行う予定であったが、当初の計画(18/19世紀転換期における「市民社会」理念にみられる排除と抑圧の契機をあきらかにし、「市民社会」理念の今日的意義を考える)を拡大する形で、第2年次から20世紀における「市民社会」理念の可能性について、アーレント、マンハイム、ハーバーマスの思想を手掛かりに検討を続けてきた。このように計画が拡大したことで、取りまとめ作業に遅れが生じている。一方、20世紀の政治思想研究と、18/19世紀転換期に関する実証的な言説研究に並行して取り組むことで、分析の枠組みとなるべき、「物語と政治」「フィクションと政治」に関する考察を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
18/19世紀転換期における女神「ゲルマニア」の表象についての研究を進める。とりわけ、ハインリヒ・フォン・クライストの「ゲルマニアがわが子らに寄せる歌」(1809)の分析を進める。本詩篇は対ナポレオン戦争期に「ドイツ」国民の結集を呼び掛けた詩として知られ、クライストの戦争抒情詩のひとつに数えられる。それらのクライストの詩篇や、同様に戦争抒情詩を手掛けたアルントやケルナーの作品を分析対象とする。その際とりわけ、これらの詩篇に現れる女神たち(ゲルマン神話のみならず、ギリシャ・ローマ神話の女神を含む)の表象に注目する。 また、「市民社会」理念の今日的意義を引き続き考察するため、ハウケ・ブルンクホルスト『連帯』の翻訳を進める。
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