接頭辞付加の形態論上の位置づけに関する通時的・共時的研究
Project/Area Number |
19K13218
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02080:English linguistics-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
納谷 亮平 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00837536)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 名詞修飾 / 関係形容詞 / 特質構造(Qualia Structure) / 派生と屈折の境界 / 前置詞 / 等位複合語 / 同格複合語 / 形容詞化 / 接頭辞・接頭辞付加 / 主要部性 / 派生・複合・屈折の境界 / 右側主要部の規則 / 派生形容詞 / 語彙範疇 / 機能範疇 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、英語の接頭辞付加に注目し、その形態論上の位置づけを、通時的・共時的観点から明らかにすることである。接頭辞付加は、通常、接尾辞付加と類を成し、派生形態論の一部として位置づけられている。しかし本研究では、「接頭辞付加は、複合または屈折のどちらかの操作と類を成す」という仮説を提唱し、その妥当性を通時的・共時的データに基づいて検証する。この仮説が正しければ、接頭辞付加は派生形態論においては役割を持たないという帰結が得られる。本研究は、英語の接頭辞およびその付加の本質的性質を明らかにするとともに、英語形態論の内部構成(派生・複合・屈折の境界)に関する理解を一層深めるものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1) 名詞による名詞修飾と名詞由来形容詞(関係形容詞)による名詞修飾の意味上の違いについて考察を進めるとともに、(2) 前置詞関連要素と派生形態論・屈折形態論との関わりについて整理し、得られた研究成果を論文の形でまとめることができた。 まず(1)について、「名詞+名詞」と「関係形容詞+名詞」の間には、意味上の違いは無いとするのが大方の先行研究の見方であるが (例:industry output vs. industrial output)、両表現をよく比較してみると、それぞれが表すことのできる意味範囲には違いがあり、「名詞+名詞」の方がより広い関係性を表せることが分かった。このような違いが生じる理由について、分類に関わる機能範疇の有無という点から論じた。関係形容詞は、分類に関わる機能範疇によって修飾対象の名詞と関係付けられる一方、名詞が名詞を修飾する場合にはそのような機能範疇による介在が無いため、より自由度が高いのだと考えられる。 (2)については、派生と屈折の境界を考える際、前置詞関連要素が関わる現象に注目することが重要である点が示唆された。前置詞関連要素が関わる現象とは、空間関係を表す格標示と関係形容詞を含めた名詞由来修飾語のことである。前者は、空間関係は広く前置詞によって表される点、後者は基底構造に前置詞句を持つと分析される点 (Nagano (2013)) で前置詞と関連した要素を含んでいる。複数の言語のデータを見てみると、前置詞関連要素が屈折の領域(格標示と特定の言語における名詞由来修飾語)と派生の領域(英語の関係形容詞)の両方で利用可能であることが指摘できる。派生と屈折の境界については形態論の分野で長く議論されてきたが、本研究の指摘に基づき、前置詞関連要素の分布という視点からもこの問題を考察できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、動詞と関わる接頭辞および不変化詞を対象として研究を進める予定であったが、昨年度までの成果を発展させる形で、本年度も名詞修飾に注目した。その中で、前置詞関連要素が関わる現象から、本研究課題遂行にあたって重要な示唆が得られた。そのため、当初の予定からは離れているものの、総合的に判断するとおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果(2)で述べた通り、前置詞関連要素は派生と屈折の境界問題を考える上で重要な要素となる。これまで、前置詞関連要素と名詞との関連に注目してきたが、さらに動詞との関連を含めることで考察の幅を広げたい。例えば動詞に付加する接頭辞は、動詞不変化詞(= intransitive preposition)と相補分布を示すという点で前置詞関連要素に含めることができる。そこで、動詞と接頭辞・不変化詞の関わりからどのような示唆が新たに得られるのか、接頭辞と不変化詞の競合や英語の通時的変化といった観点を含めて考察を進めていく。 得られた成果は、研究会や学会などで順次発表し、フィートバックを得ることによって研究を発展させていく。 また、前置詞関連要素と名詞・動詞との関わりという観点から本研究課題の総括を行い、その成果を論文の形でまとめることを目指す。
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Report
(4 results)
Research Products
(17 results)