Project/Area Number |
19K13227
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02080:English linguistics-related
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
海田 皓介 明治大学, 商学部, 専任准教授 (50827219)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 古英語 / 古高ドイツ語 / 奨励 / 勧誘 / 使役 / 語彙 / 接頭辞 / 写本 / 助動詞 / hatan / let / uton / モダリティ / 法助動詞 / ゲルマン語 |
Outline of Research at the Start |
本研究は英語の「使役」(「~が~に~させる」の意)と「勧誘」(「~しよう」の意)を表す語彙の交代関係を扱う。「使役」を表すletが「勧誘」を表すlet's (< let us)に変化した過程が中心を占めるが、他にもこれらに関連する複数の語彙が存在する中世英語(古英語・中英語:700-1500年)の資料を分析する。「使役」・「勧誘」両概念が表す行為についての話者の心的判断(モダリティ)の分析を、英語と関連するゲルマン諸語の視点も入れ行うことで、モダリティの歴史的研究の発展に寄与することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実績を三点にまとめる。今年度は所属機関における在外研究員制度により英国ケンブリッジ大学英文学部ASNC(Faculty of English, Department of Anglo-Saxon, Norse and Celtic)にて研究を行った。 第一に、「勧誘」表現の土台となる「奨励」(exhortation)の表現方法につき研究を進めた。「奨励」の文脈を有する古英語と古高ドイツ語の特定の文章(キリスト教詩・散文)を題材に、動詞だけでなく副詞の使われ方や、聴衆(または読者)に呼びかける語句や、「裁きの日」や「主の祈り」といった彼らに身近な宗教的話題がどのように扱われているかにも目を向け、文章全体として「奨励」が伝達される構成を分析した。ケンブリッジ大学所属の研究者の助言を受けつつ研究を進め、この成果を英文学部ASNCと、訪問研究員の資格を得たカレッジ(St Catharine's College)の研究会にて報告した。 第二に、「勧誘」表現研究の一環として、文頭に立つ中英語の法助動詞の研究を継続した。現代英語の法助動詞willの前身である中英語willenの用法について、これが現れる文章の校訂本だけでは判断が困難な点があり、オクスフォード大学図書館において写本を閲覧した。この結果、willenのもつ「勧誘」表現の一形式としての役割を確認した。 第三に、「使役」表現に用いられる動詞に関連し、いくつかの動詞に接頭辞が付いた派生動詞の用法を調査した。これまでは主に古英語について調べていたが、今年度はケンブリッジ大学のゲルマン語学研究者の助言のもと、古高ドイツ語の電子コーパスを用いて広い視点から調査した。 なお追記ながら、前年度の報告にある、古英語と中英語の語句Let we(+ 不定詞)が「勧誘」表現の発達に寄与する可能性を述べた論文は今年度中に公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は国外における研究環境を活かし、日本にいながらでは実施が困難であった活動に従事した。過去数年間に延期または中止となっていた対面形式での国際学会の参加が可能となり、英語史研究の新しい動向について情報を得ることができた。また報告者の研究対象となる古英語や古高ドイツ語の文章が記録されている写本の原本をケンブリッジ大学、オクスフォード大学やドイツ、ミュンヘンのバイエルン州立図書館に赴き閲覧する機会にも恵まれた。更に複数の国外研究者との交流から、現在進行中の研究のみならず、今後の研究を考えるうえでも有益な示唆を得た。こうした状況から、本研究はおおむね順調に進展していると見ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画は2024年度までの延長が認可された。また所属機関における在外研究員制度によりケンブリッジ大学での研究滞在も同年度中、継続できることとなった。2024年度は英文学部ASNC との交流を保ちつつ、言語学部(Faculty of Modern and Medieval Languages and Linguistics)にてゲルマン語学の研究に従事する。「使役」・「勧誘」に用いられる語彙の分析は行いつつ、古英語と古高ドイツ語の「奨励」概念の比較研究を進める。今年度中に扱った文献以外でも「奨励」やあるいは「使役」・「勧誘」を表すためにどのような語彙が用いられるか、また「裁きの日」や「主の祈り」といったテーマがどのように引用やパラフレーズをされて語られるかという点についても、両言語資料のコーパスや校訂本を用いて分析を進める。個別の語彙のみならず、文章全体の構成に注目した幅広い研究を行いたい。
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