Project/Area Number |
19K13523
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05030:International law-related
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋山 公平 早稲田大学, 法学学術院, その他(招聘研究員) (50801081)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
|
Keywords | 貿易と人権 / 人権条項 / ビジネスと人権 / 米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA) / 紛争処理 / 履行確保 / 自由貿易協定(FTA) / 社会的価値 / 労働・環境条項 / 人権デューデリジェンス / 紛争解決・履行確保 / 持続可能な開発 / 国際規範の遵守確保 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、自由貿易協定の労働条項と環境条項が定める紛争解決手続及び履行確保手続の比較からそれら手続の特徴と性質を特定し、従来の国際通商協定の遵守確保制度との関係を理論的に考察する。労働や環境分野の規則形成は自由貿易協定を通じて発展しつつあるが、その遵守確保のための制度設計には、最終的に経済的措置を科すか否かで見解の対立がある。労働や環境分野の義務の遵守確保には行動計画の策定等の協力的手法が有用な場合も想定でき、実際の協定もこれら2つの手法を同時に採用する。このような紛争解決手続と履行確保手続の融合の実態を実証と理論の面から解明し、社会的価値の実効的な確保のための仕組みを考察する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2024年度は、『清水彰雄先生古稀記念 国際経済法の課題と展望』(信山社、2023年10月)に「貿易と人権(再考)」と題する論考を寄稿した。これは、社会的価値の一つとされる人権を題材として、国際経済法において人権の考慮が求められる要因について、経済思想や法学一般の観点から再考し、WTO協定における人権的価値の考慮に関する先例・学説の発展過程を整理した上で、EUの自由貿易協定に含まれる「人権条項」や、国際連合で議論がなされている「ビジネスと人権」分野の条約化の動向に関する実践や議論の現状の到達点を示したものである。本研究成果は、2023年度の研究成果を基にして公表したものである。次に、『フィナンシャル・レビュー』(財務総合政策研究所、2024年2月)に、「自由貿易協定における履行確保手続の発展-米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の労働・環境を題材としてー」と題する共著の論文を寄稿した。USMCAでは、個別事業所を対象とした「労働即応メカニズム」(Rapid Response Labor Mechanism)という新たな履行確保手段が採用されており、同メカニズムの下では、国家が他国の企業に対して労働法令の遵守を促すような仕組みが採用されている。また、環境分野においても、従前の北米自由貿易協定で採用されてきた個人申立手続を引継いでおり、これらの仕組みを通じて、労働・環境双方の分野において、私人の関与を伴う履行確保手段が発展してきている。本研究成果は、これらの点を、事例分析を通じて実証的に示すものである。最後に、国際法学会ホームページに、「エキスパートコメント:『貿易と労働』の最前線」(2024年3月)を寄稿し、19世紀後半から始まる論争の起源から、上記USMCAの新たな動向に至るまでの議論状況を整理した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グローバルサプライチェーンにおける労働・人権・環境の保護は、国際社会の喫緊の課題として認識されるようになってきており、これらの関係の重要性を指摘する政策文書も次々に公表され、各国の取組み、とりわけ自由貿易協定における社会的価値関連規定の実践も日々進展している状況である。本研究課題にとって、新たに生ずるこれらの実践の整理は不可欠であり、当初想定したよりも検証に多くの時間が必要となってきている。しかし、2023年度までで、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で導入された、労働に関する新たな履行確保メカニズムに関する実践分析は済んでおり、また、米国とは従来異なるアプローチをとるとされてきたEUの協定における紛争事例についても、2023年度までで一通りの分析は完了している。2024年度は、これらの新たな動向も研究成果に織り込みつつ、研究成果を統合していく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は研究の最終年度として、これまでの研究成果の統合を目指す。まず、2023年2月に第102回国際判例事例研究会で実施した「EU韓国自由貿易協定『貿易と持続可能な開発章』の不遵守に関する専門家パネル報告書」に関する口頭報告の研究成果を公表する。この事例では、米国の自由貿易協定に含まれる労働条項の下で生じた紛争とは異なり、労働条項(EUの協定では貿易及び持続可能な開発章に含まれる)の義務不遵守の際に要求される「貿易関連性」(労働条項の不遵守が当事国間の貿易に影響を与えるものであったか否か)の要件を一定程度緩和する判断が示されている。この貿易関連性について、一方で、米国の自由貿易協定の事例のように厳格な立証を要求すると、労働者保護が達成されないとの批判を招く可能性があり、他方で、それをまったく要求しないとなると、自由貿易協定のなかに労働条項が含まれる意義が問われることとなり、この論点は、労働条項が達成しようとする目的やその法的性格付に関する議論に影響を及ぼす。以上のように、これまで労働条項に関しては、米国の協定とEUの協定との間で、貿易関連性に関する異なる方向性が示されてきており、この点を明示的に指摘する研究は国内外をみてもいまだに存在しない。前述のとおり、本論点は、自由貿易協定における労働条項の役割を再考させる意義を有するため、これまでの研究における検討結果と併せて成果を公表する予定である。以上までの研究で、米国とEUという従来異なるアプローチを採用するとされてきた両者の貿易自由化の文脈における労働・環境・人権それぞれの分野における取組状況が整理されることとなる。2024年度はこれらの研究成果を統合し、国際経済法における社会的価値の実効的な実現に関する見解を世に示したいと考えている。
|