Project/Area Number |
19K13916
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Keio University (2020-2023) Waseda University (2019) |
Principal Investigator |
木下 衆 慶應義塾大学, 文学部(三田), 助教 (00805533)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 認知症 / 看取りケア / 家族介護 / 医療社会学 / 家族社会学 / 延命医療 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、終末期を迎えた認知症患者の意思を、介護者たちがどのように読み取り解釈しているのか、特に介護家族の役割に注目しながら明らかにすることだ。 認知症介護においては現在、患者本人の意思の尊重が重要視されている。しかし患者が何を希望しているかを読み取ることは、非常に難しい。そこで介護家族はしばしば、患者のライフヒストリーに基づいて相手の意思を解釈し、選択を代行しようとするが、それにも限界が指摘できる。 こうした問題は看取りケア、特に延命医療の選択において先鋭化する。 本研究は、看取りケアに取り組む複数のケースを調査し、問題の構造を明らかにした上で、より良い意思決定支援のあり方を構想する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、終末期を迎えた認知症患者の意思を、介護者たちがどのように読み取り、解釈しているのか、特に介護家族の役割に注目しながら明らかにすることだ。認知症介護においては現在、患者本人の意思の尊重が重要な目標として掲げられている。しかし、認知症が記憶障害やコミュニケーションの障害を特徴とする以上、様ざまな困難が生じる。そこで介護家族はしばしば、患者のライフヒストリーに基づいて患者本人の意思を解釈し、選択を代行しようとするが、それでも限界が生じる。 そうした困難を先鋭化させたのが、2020年から始まったコロナ禍である。接触の機会が制限される中、意思の読み取りや尊重は、さらに困難となっている。そうした状況に対処すべく、介護現場では「リモート面会」など、特徴的な試みも実施されてきた。本研究は、長年調査に協力してくれていた介護家族に依頼し、そうしたコロナ禍における困難についても、調査・研究を行ってきた。 ただし2023年度は、コロナ禍での看取り経験を聞き取り予定だった調査協力者二組への本格的調査を、見送らざるを得なかった。調査協力者も調査には意欲的ではあったものの、肉親を失ったことに伴う心身の負担が大きかったからだ。そこで2023年度の調査も、あくまで予備的な調査と位置付け、調査協力者との信頼関係づくりに努めた。 一方2023年度は、調査成果の分析・発表の新しいスタイルにも挑戦し、成果をあげることができた。論文「家族と介護の「距離」――相手の傍に居続けること」(『VOICE』552号)である。この論文では、コロナ禍前に収集したデータとコロナ禍でのデータを比較しつつ、認知症看取りケアにおいて一貫した困難があることを指摘した。 2024年度は、そうしてコロナ禍で収集した新しいデータと、これまでの調査データの蓄積とを比較検討することで、新たな成果が生み出せるものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、長年の調査協力者である介護家族IとMに継続的な調査を実施する予定で、調査計画をたてていた。二人とも、長年認知症の実母を介護していて、このコロナ禍での看取りを経験した。彼らの経験は、認知症看取りケアの、またコロナ禍でのケアを考える上で、非常に特徴的な事例だと考えられた。 しかし、調査協力者二名とも調査には意欲的で、また協力的ではあったものの、肉親を失ったことに伴う心身の負担が大きく、調査を本格的に実施するのは難しい状況であった。そこで、2023年度に無理な調査を実施するのは倫理的な問題が大きいと考え、あくまで予備的な調査(メールでのやり取り、今後に向けてのミーティングなど)に留めた。 その他、家族会(介護家族の自助グループ)などでの調査も検討していたが、主に予定していた調査の計画変更に伴い、別な調査も一度延期し、2024年度の実施を目指すこととした。 このように、研究成果に関しては一定のペースで順調に発表できているものの、調査自体の実施については、2023年度やや遅れが生じる結果となった。 しかし、このように研究計画を大きく変更したことは、適切な研究を実施するための信頼関係を醸成するために必要だったと考えている。認知症の社会学的研究は、2024年度、あるいはそれ以降も継続していく必要がある。そしてコロナ禍対応に関しては、多くの行動制限が撤廃されたものの、介護現場では今なお、厳しい状況が続いている。調査協力者の心身の負担や社会的情勢も踏まえ、少し計画が遅れることがあっても、最終的な研究成果につながるよう、丁寧な調査の遂行を心がけていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、介護家族IとMの看取り経験について、調査を実施する予定である。これは、本来なら2023年度に実施する予定だったが、二人の心身の負担を考慮し、延期した調査計画である。二人(二家族)とも、コロナ禍での看取りという特徴的な経験をしている。認知症看取りケアの課題が、コロナ禍においてどのように先鋭化したか、十分なインタビュー調査を実施したいと考えている。 また、家族会(介護家族の自助グループ)での調査も実施する予定である。コロナ禍で一部活動を休止していた団体もあるので、この間の会員のサポート体制などについても、調査を実施したいと考えている。 ただし、看取り経験が非常に繊細な経験であることは言うまでもない。今後も研究者の計画を優先するのではなく、各介護家族の状況に即し、調査を実施したい。 コロナ禍は、本研究のテーマである「終末期を迎えた認知症患者の意思を、介護者たちがどのように読み取り、解釈しているのか」という問題を、先鋭化させて いる。コロナ禍前のデータを収集・分析することも継続しつつ、コロナ禍の認知症ケアへの影響も、可能な形で記録し、分析していきたい。
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