Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
口蓋裂は最も頻度の高い先天奇形の一つであり、口蓋発生分子メカニズムの正確な把握が必須である。近年、遺伝子欠損マウスを利用し、口蓋発生メカニズムが解明されてきている。抑制を司る分子が欠損した場合、そのターゲット分子が過剰発現するため、遺伝子過剰と口蓋裂発症との関連性を知る必要があるものの、明らかでない。そこで、その欠損が口蓋裂を引き起こすことが知られているShhシグナルの過剰発現による口蓋形成への影響を検索した。R26SmoM2マウスはCreマウスと交配させることで、Cre発現細胞でShhシグナルを過剰発現させることができる。Keratin14Creマウスと交配させ、上皮細胞でShhシグナルを過剰発現させた結果、口蓋裂を認めた。口蓋裂は、口蓋突起が正中で癒合したのちに生じるはずの上皮細胞のアポトーシスの欠如により引き起こることが明らかとなった。Osr2Creマウスと交配させ、口蓋突起の間葉組織でShhシグナルを過剰発現させた場合にも口蓋裂を認めたが、表現型にばらつきが存在していた。これは、Osr2CreのCreリコンビナーゼ発現にばらつきがあるためであることが明らかとなり、Osr2Creを使用した検索は困難と判断した。口蓋突起を含む顎顔面領域の間葉は神経堤由来細胞で占められている。そこでR26SmoM2マウスをWnt1Creマウスと交配させ、神経堤由来細胞でShhシグナルを過剰発現させた。口蓋裂は確認できたものの、顔面形成阻害が非常に大きく、今回の実験モデルとしてそぐわないことが明らかとなった。以上の結果より、Shhシグナルは欠損でも過剰でも口蓋裂を引き起こすため、fine-tuningが求められるpathwayであることが明らかとなった。一方、今回の結果から口蓋形成における過剰なShhシグナルを検索するためには、過剰発現させる細胞の選定に注意が必要であることも示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。