Project/Area Number |
19K21609
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 1:Philosophy, art, and related fields
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
深貝 保則 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 名誉教授 (00165242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 俊 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 特任教授 (50155404)
林 和弘 文部科学省科学技術・学術政策研究所, データ解析政策研究室, 室長 (00648339)
蔵川 圭 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 教授 (10332769)
葉山 雅 横浜国立大学, 研究推進機構, 特任教員(講師) (40829917)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
Fiscal Year 2020: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | オープンサイエンス / 学術情報 / Covid-19 / フーコー / マートン / Nextstrain / 知の創造 / 知の帰属 / コロナ感染症 / 人新世 / ワクチン開発 / 知的所有権 / ロバート・マートン / 電子的情報コミュニケーション |
Outline of Research at the Start |
20世紀前半から中葉にかけて、科学は国家的な管理のもとに置かれがちであった。冷戦終焉ののち、委託研究や特許など産業との関わりが重要となったが、昨今の電子的ネットワークの隆盛のもとで、科学的な営為のあり方は大きく揺らぎつつある。成果の達成度を引用などのインパクトを軸に測るという面では、かねてデータを囲い込むという誘因が働きがちであったが、ネットワーク型のデータ提供および討論の可能性は、むしろ知をオープンにする動因をも含んでいる。 21世紀前半の情報コミュニケーションの展開のもとで知的創造の可能性を見直す視座を模索するために、《オープンサイエンスの社会学》というアプローチを進めるものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
オープンサイエンスの展開をめぐって、2点について検討を行なった。[1] 2020年代初頭に直面した課題の一例として、Covid-19 状況下の多層的な応答を探る作業を行なってきた。膨大なデータを集積してウィルスの変異や感染拡大の状況を捉え、それをもとに疫学的な対策や行動規制を含む社会的処方が進められたが、これを科学と社会との関わりの点で捉えるために、ミシェル・フーコーの知見を活かして特徴づけることを試みた。[2] 最新の科学技術開発において、人工知能と並んで宇宙開発が新たな展開を見せている。アルテミス計画は2030年代までに月面への探査基地を構想するが、その先に火星への観察と有人飛行の実現へと、その射程を及ぼしている。ここには、宇宙観察拠点の複線化や生命生成の謎の解明など科学的探求心の面と並んで、宇宙資源の調達や、さらには人間の生存空間を地球以外にも広げようとの、科学的探求を超えたある種の野心も含まれている。ここでは、技術開発の可能性とともに、宇宙と人間との関わりのあり方をめぐっての規範的な領域との面からの検討もまた、必要となろう。そこで、科学(サイエンス)の展開の意味を社会・生命・宇宙のあり方(規範)との関連において、広角的な(オープンな)視点から検討した。 2013年のG8科学技術関係大臣会議で提起されたオープンサイエンスの課題をめぐる日本での応答は、当初は欧米諸国に比して出遅れたもののその後徐々に進んでいる。とくに図書館情報学の観点から学術情報基盤の諸相をめぐって、多角的なフォロー、検討が得られた。この数年、欧米ではオープンサイエンスそのものを科学論、科学方法論として検討に付す議論がいくつか登場しており、そこで2023年度にこの面でのフォローを行なった。これはサイエンスの社会学を展開したロバート・マートンに倣って、オープンサイエンスの社会学という観点を据えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
この研究計画の設定当初は、関連領域の国外研究者複数の同時招聘によるワークショップの設定や、海外の関連学会への参加報告などを中心として展開する予定であった。しかし2020年初頭以来の Covid-19 の出現と蔓延のなかで、この実施形態は大幅な修正を迫られた。その反面、Covid-19 をめぐる医療、科学、政策、そして社会的活動のあいだの複雑な様相という事象自体が、サイエンスの展開のあり方をめぐってのオープンな視点からの観察・検討を促すこととなった。そこで、Covid-19 に起因する研究推進期間の延長という制度を活かして、むしろ時間をかけてこれらの観察と検討を進めることとした。 なお、2023年度には研究業績概要に掲げる2点のテーマをめぐって、国内学会での報告の機会を設けた。そのうち [1] について補足しておく。1960年代から1980年代にかけてミシェル・フーコーは、『臨床医学の誕生』や『知の考古学』という生成論的学術論、『監獄の誕生』が象徴するような統治と結びつく知の系譜的展開論などを提示した。この研究課題との関連で注目されることのひとつは、とくに18世紀以降、データの収集とそれに基づく分類が重視されるようになった次第をフーコーが説き起こしていることである。2020年からの Covid-19 状況は、データの収集とそれに基づく解析、および疫学的政策的な処方の進め方という側面と並んで、集積された情報の数字の大きさなどがもたらすさまざまなインパクトがいかに人々を、社会を、政策を、そしてサイエンスを振り回したか、という意味でも、検討されるべき事象であったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「研究業績の概要』の後半部分に掲げる点について、国外のいくつかの研究文献を対象としてのサーヴェイと、それに関連した検討の論文化を図る。さしあたり、Frank Miedema, Open Science - the very idea, Springer, 2022 や Sabina Leonelli, Philosophy of Open Science, Cambridge University Press, 2023 などを主たる検討対象とする。また、1990年代にすでに open science の設定のもとで知の社会的意味を検討していたポール・A.ディヴィッドの議論をも活かす。 2010年代半ば以来のオープンサイエンスの展開は、情報基盤の最新の技術水準に支えられたものである。だが、2013年時点の Open Science の提起の時点では必ずしも念頭に置かれていなかった事態として新たに、生成 AI の登場によって、従前の知の創出手法を塗り替え、場合によっては知の創出主体のあり方を揺るがす可能性も生じつつある。この側面はある意味で、近代のいわゆる科学革命の時期の、活版印刷の実用化と Philosophic Transactions など新たな知の交換メディアを媒体とした学術の状況にも似た、21世紀型様相でもある。20世紀半ばに知識社会学の領域を展開したうちのひとり、ロバート・K.マートンはその初発の議論として、この17世紀の知の様相を科学‐技術‐社会の関わりとして検討していた。そこでマートンの科学社会学(サイエンスの社会学)のスタイルをも参看しつつ、Covid-19、アルテミス、および人工知能という2020年代段階の特徴的な様相のもとに、「オープンサイエンスの社会学」の提起を行なう。 これらの諸論点をめぐって、学会報告とともに、オープンな形での論文の公開を行なう。
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