Project/Area Number |
19K23067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
0102:Literature, linguistics, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福長 悠 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (70845734)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2020-03-31
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Project Status |
Discontinued (Fiscal Year 2019)
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Budget Amount *help |
¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2020: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2019: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 左翼文学 / モダニズム / プロレタリア文学 / 大衆運動 / 中国現代文学 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、20世紀中国の作家張天翼(1906-1985)に関するものである。張天翼は習作期に鴛鴦胡蝶派や象徴主義の作風を試みたのち、左翼作家として文壇に登場し、労働者、農民、兵士を主人公とする小説を発表した。張天翼は、モダニズム文学とプロレタリア文学の双方に影響を受けていると考えらる。本研究では、作品の表象を生み出した社会的背景を調査することで、テクスト生成の過程を明らかにする。またそれにより、一見して実験的あるいは遊戯的な張天翼の文体が、当時の社会と切り結んだ関係を考察する。本研究は、最終的に中国における左翼文学とモダニズム文学の影響、対抗、相互浸透の一端を解明することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1920年代に文壇に登場し、風刺小説、軍隊小説、児童文学など多彩な方面に才能を発揮した作家、張天翼(1906-1985)に関するものである。張天翼は習作期に鴛鴦胡蝶派や象徴主義の作風を試みた後、左翼作家として文壇に登場した。本研究では、作品の背景となった社会的事象を探り、テクストが生成した過程を明らかにすることを目指した。このため、2019年10月に東京大学東洋文化研究所と国会図書館にて当時の文芸誌を閲覧し、作品の原文や同時代評など基礎的な資料を得た。また、同月から11月にかけての2週間に、中国の上海、浙江省、および江蘇省の図書館で調査を行い、当時の新聞雑誌および地方資料を閲覧した。調査の結果、張天翼の短編小説「蜜蜂」(1932年)で書かれた暴動と同様の事件が、1930年代の浙江省で起きていたことが明らかになった。暴動は養蜂業者と農民の対立を軸としており、上海で刊行された複数の新聞に報道が確認される。また、1920-30年代に発行された養蜂及び農業関連の雑誌、民国政府実業部の公報からは、同様の事例が複数の地域でみられたことが確認される。養蜂業者と政府は蜂が農作物に対して無害または有益であると広報し、張天翼の作品についても同時代に批評家の曹聚仁が背景知識の不足を指摘する批評を発表している。テクストは暴動に参加した少年の手紙という体裁を取っており、誤字や当て字という言語的規範を逸脱する表現が手法として選択されている。張天翼は言語的規範からの逸脱というモダニズム的な手法を用いることで、言語行為そのものを前景化させ、科学的言説をめぐる民衆と権力者の間の埋めがたい溝を表象することを試みたと考えられる。今後は日本国内および中国において関連資料の収集を進め、学会等で研究成果を発表する予定である。
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