Project/Area Number |
19K23347
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Research Category |
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
:Education and related fields
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
木村 友香 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (40843892)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2019)
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Budget Amount *help |
¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 女性の理系進学 / 女子薬学専門学校 / 女性薬剤師 / 女性 / 理系進学 / 薬学専門学校 / 進学要因 / 高等教育史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、女性の理系分野への進学要因を理解するために、日本における女性の薬学教育の成立と定着について、歴史的、実証的な検討を試みるものである。 理系分野の女性比率が低い中で、薬学系分野においては、比較的安定した女性進学者が存在してきた。本研究では、女性の多い分野に着目し、女性がなぜ理系である薬学系分野を選んだのか、つまり“進学促進要因”を明らかにする。明治期に成立した薬学教育制度の中で、薬剤師養成は女性に開かれた分野でもあり、薬学系分野には戦前から女性が多い。本研究では、戦前の女子薬学専門学校の発展を中心に、女性の薬学系分野への進学とその周辺状況を歴史的に検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、女性の理系分野への進学者の少なさを解消するために、女性の薬学系分野への進学要因について、歴史的、実証的な検討を試みることである。現在理系分野の女性比率が37% にとどまる中で、例外的に薬学系分野においては、比較的安定した女性進学者が存在してきた。これまで女性の理系進学支援策においては、その“進学阻害要因”にばかり焦点が当たりがちであったが、本研究では、女性がなぜ理系である薬学分野を選んだのか、つまり“進学促進要因”を明らかにする。明治期に成立した薬学教育制度の中で、薬剤師養成のみが女性に開かれた分野となり、薬学系分野には戦前から女性が多い。本研究では、戦前の女子薬学専門学校の発展を中心に、女性の薬学系分野への進学とその周辺状況を検証する。初年度の研究成果として得られた実績は以下の通りである。 初年度の活動として、先行研究、薬学教育の基礎資料を蒐集し、また戦前に存在した8つの女子薬学専門学校を前身とする大学に問い合わせ、戦前の資料の有無を確かめた。そのうち資料の所蔵を確認出来た神戸薬科大学(神戸女子薬学専門学校)、静岡県立大学(静岡女子薬学専門学校)、東京薬科大学(東京薬学専門学校女子部)、明治薬科大学(東京女子薬学専門学校)、慶応義塾大学薬学部(共立女子薬学専門学校)について訪問し、資料蒐集を行った。そのうち、神戸薬科大学と東京薬科大学において戦前の薬学専門学校に所属した女性の卒業後の進路がわかる名簿を確認し分析した結果、次の点が明らかとなった。戦前の女子薬学専門学校は女性としての役割を意識した設立目的を掲げているが、卒業生は薬局の他、多方面に進出しており、特に第二次世界大戦期には製薬・化学系の企業への進出が多くみられた。その進路は当時の女性の進路選択に大きな影響を与えたと考えられる。一方で、職業を持たないものも多く、戦前の女性の就業継続の困難さが見て取れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画は、①第二次世界大戦前の高等教育政策における女子薬学教育の特性、②第二次世界大戦前の医学・家政等、女性が在籍した分野と女子薬学教育との比較、③第二次世界大戦前の男子向け薬学教育機関と女子薬学教育機関とを比較した入学時の学生の学力、教育内容、カリキュラム、卒業後の進路に関する比較検討、④第二次世界大戦前の女子薬学専門学校の在学生の実態(入学者の出身学校、地域、階層等)および卒業後の進路、⑤欧米の科学、衛生観念の家庭への浸透が女性の薬学教育機関進学に与えた影響、を明らかにすることであった。 以上について、戦前に存在した8校の女子薬学専門学校を前身に持つ大学に資料の有無を確認し、蒐集して分析した。また、戦前の女子教育機関を前身とする大学の学校史や関連資料を入手し、分析を行った。以上の作業を通じて、初年度の研究計画はおおむね順調に進展しているものと考える。また、本年度、国内3件、国外1件の学会研究発表を行い、報告を通じて、薬学、教育学の観点から、さらに歴史的、国際的な視点からの今後の研究計画を進めるに当たっての示唆を得られたことも大きい。女子薬学専門学校在学生の実態の解明、男子向け薬学教育機関との比較に関しては、さらに継続して作業を継続する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き研究計画に基づいて研究をすすめる。2年目の計画は以下の通りである。 ⑥第一次世界大戦以降の総力戦体制が女性の薬学教育機関進学に与えた影響⑦第二次世界大戦後以降に共学化した薬学部との連続性-薬学専門学校の4年制大学化、男女共学化、国立大学薬学部の女性への開放の経緯、GHQ・CIE等の占領政策の影響の検討⑧歴史的検討で得た女性の理系進学支援策への示唆をふまえて、現在の文部科学省による理系の進学支援、内閣府による「女子生徒等の理工系進路選択支援」の意義を検証する⑨アメリカ、ヨーロッパの中で、薬学系分野に女性が多い国の情報蒐集及び歴史的検討を通じてその進路要因を明らかにし、日本との比較検討を行う 研究方法は、前年から引き続き、公文書、各種学校史、薬学関係団体史及び薬学教育・女性教育など関連文書、資料を蒐集する。戦前の薬学専門学校の在学生の分析に関しては、戦後教育改革期に改組された大学の担当部署、同窓会組織などにアクセスして入手する。また、当時の在学生、もしくは彼女たちを知る人物にインタビュー調査を行う。 研究成果として集約するため、得られた歴史的資料についてさらなる考察を継続する。衛生観念の家庭への浸透や、総力戦体制との関連も併せて検証する。また、薬学部の卒業生に対してアンケート調査を行い、現代的な視点からも、薬学部への進学要因を調査し分析を行う。同時に、研究成果を広く社会へ還元するために、国内外の学会での研究発表を予定している。(新型感染症の影響により、海外での調査、研究報告の実行に不透明な要素があるが、WebやOn lineを活用し、その代替を図りながら調査を継続する。)併せて、科学研究費若手研究での発展を視野に研究を進めていく。
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