Project/Area Number |
19KK0210
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (B))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 50:Oncology and related fields
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
廣田 耕志 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (00342840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 雅貴 国立医薬品食品衛生研究所, 変異遺伝部, 室長 (00734104)
阿部 拓也 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (50779999)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥18,460,000 (Direct Cost: ¥14,200,000、Indirect Cost: ¥4,260,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2020: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2019: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
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Keywords | DNA修復 / ヌクレオシドアナログ / ゲノム編集細胞コレクション / 遺伝子シナジー / 癌治療 / ガン / ゲノム不安定化 / DNA損傷 / がん治療 / 合成致死 / 化学物質 / スクリーニング / チェックポイント / 相同組換え / 損傷 / 分子標的 / ガン治療 / DNA複製 / ゲノム維持 / 腫瘍 / 治療 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、遺伝子―遺伝子間のシナジー効果を「遺伝子シナジー」と定義し、ゲノム維持における遺伝子シナジーの分子レベルでの包括的理解を目指し研究する。首都大及び広島大からなる国内研究グループは、包括的スクリーニングによって新規の遺伝子シナジーの抽出を行う。イタリアIFOM研究所は、ゲノム構造異常を電子顕微鏡を用いて調査する独自の技術を持つ。米国NIH研究所は、世界最大の化合物ライブラリーを持ち、スクリーニング用ロボットを用いたハイスループットスクリーニング法を確立している。本研究で抽出した遺伝子シナジーの分子レベルでの作動機構の理解のためにイタリアIFOM研究所と共同研究を推進する。
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Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムの不安定化は細胞老化や発ガンに密接に関わっており、「ゲノム維持メカニズム」は集中的な研究が必要とされる分野の一つである。これまでにゲノム安定性に寄与する分子機構・責任遺伝子が多数同定されているが、これらの機能欠損によって発症する先天性ゲノム不安性疾患の罹患率から推定すると、各個人において少なくとも数個の遺伝子にヘテロの劣性変異が存在すると考えられる。この変異遺伝子の組合せ次第では、ゲノム不安定化要素として相乗効果(シナジー)を及ぼすと考えられる。ゲノム維持に関する基礎研究で、さまざまなシグナル経路や修復因子の間の相互作用が発見され、基礎科学としての重要性と臨床・創薬など社会還元に向けた応用の可能性が認められつつあり、遺伝子間のシナジー効果や化学物質―遺伝子間のシナジー効果の知見の重要性が認識されている。本研究では、これらのシナジー効果を遺伝子シナジーと定義し、遺伝子シナジーの包括的抽出とその分子メカニズムの包括的理解を行う。これまでに以下の成果を挙げた。(1)ヌクレオシドアナログ5種の25種類の遺伝子とのシナジーを検討し、構造がよく似た化学物質であっても細胞効果は全く異なり細胞への曝露実験をしない限りその毒性は不明であることを見出した(投稿中)。(2)脳腫瘍治療に用いる抗がん剤として使用されるTMZと呼ばれるアルキル化薬品やPARP阻害低分子治療薬品のXRCC1との遺伝子シナジーを発見した(英国との共同研究:プレスリリース)。(3)カンプトテシン抗癌剤治療での、BRCA1と遺伝子シナジーとなる因子として、PolE1(校正活性変異)、CTF18(PolE複製鎖のPCNAクランプローダー複合体の1つ)を同定した(イタリアとの共同研究)。 上記の発見は、基礎科学として新規性が高く未知の分子機構の一端を明らかにしたものであるとともに、癌治療応用に資する有益な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までに、国際共同研究により以下の3点の成果を挙げた。(1) ヌクレオシドアナログと呼ばれる、これまでにウィルス治療に利用されている薬品20種から、特に興味深い細胞特性を示した5種を選別し、25種類の遺伝子変異細胞への曝露実験を実施し、遺伝子シナジーを検討した。その結果、構造がよく似た化学物質であっても細胞効果は全く異なり細胞への曝露実験をしない限りその毒性は不明であることを見出した(投稿中)。この研究で、薬品毎の異なる作用機構やその結果引き起こされるDNA損傷の修復経路の違いを明らかにし、異なる遺伝子変異を持つ個別のがん患者に対する適切な投薬につながる基礎データを得た。(2)脳腫瘍治療に用いる抗がん剤として使用されるTMZと呼ばれるアルキル化薬品やPARP阻害低分子治療薬品のXRCC1との遺伝子シナジーを発見した(英国との共同研究:プレスリリース)。この研究で、XRCC1の塩基除去修復における新機能を発見するとともに、癌治療における有益なバイオマーカーとしてのXRCC1の利用を提唱できた。(3)カンプトテシン抗癌剤治療での、BRCA1と遺伝子シナジーとなる因子として、PolE1(校正活性変異)、CTF18(PolE複製鎖のPCNAクランプローダー複合体の1つ)を同定した(投稿中、イタリアとの共同研究)。この研究では、これまで分子機構が未知であった断裂した複製鋳型鎖での複製フォーク反転機構に新しい因子を加え、詳細な分子機構の解明につなげた点で画期的成果といえる。また、これまでのカンプトテシン抗癌剤治療に患者ごとの癌変異情報を利用したテーラーメイド医療の要素が追加できる応用研究にもつながるポテンシャルを持つことでも大きな波及効果が期待できる。以上の事実から、「計画以上」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ヌクレオシドアナログと遺伝子間の遺伝子シナジーの研究はこれまでの継続研究を推進する。期間終了までに化合物10種の遺伝子シナジーの解明を目指す。 (2)上記の成果で、XRCC1が塩基除去修復時にPARPがDNAに結合した有毒なPARP-trapped complexとなるのを防ぐ機能を持つことを解明した。この研究の推進の中で、XRCC1がミトコンドリアでの6-4光産物(紫外線による損傷の1つ)の修復に寄与することを見出している。今後は、ミトコンドリアでのUV損傷修復の分子機構について研究を進める。 (3) カンプトテシン抗癌剤治療での、BRCA1と遺伝子シナジーとなる変異として、PolE1-exo-、CTF18-を同定した。CTF18のC末端領域にはPolEとの相互作用領域がある事が、酵母で知られているので、この領域の点変異や欠損変異体を作製することで、フォーク反転における両因子の相互作用の機能を調査する。この領域の構造から相互作用部位にはまり込んで相互作用を不良化するような化合物をスクリーニングすることで、PolE-CTF18によるフォーク反転を阻害し、BRCA1変異の治療に期待できる新規の抗がん薬品候補を取得し、治療応用への道筋をつける。 2023年度は本研究の締めくくりの年となるので、米国NIH、英国レスター大学、イタリアIFOM研究所を訪問するとともに学生交換も行い、共同研究のさらなる推進をするとともに次の共同研究のための相談をし、共同研究の新たな展開を開く。
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