A historical study of cultural exchanges in the context of the multi-layered and transnational experiences of Japanese-American immigrants
Project/Area Number |
19KK0297
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (A))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | Osaka Metropolitan University (2022) Osaka City University (2019, 2021) |
Principal Investigator |
廣岡 浄進 大阪公立大学, 人権問題研究センター, 准教授 (30548350)
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Project Period (FY) |
2021 – 2023
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥15,080,000 (Direct Cost: ¥11,600,000、Indirect Cost: ¥3,480,000)
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Keywords | 日系人強制収容 / 日本国憲法 / GHQ草案 / 部落差別 / 人種主義 / 生政治 / 沖縄 / 強制収容 / レイシズム / 部落問題 / 差別 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、アメリカ西海岸およびハワイにおける日系移民の中での部落出身者と沖縄出身者に焦点をあてながら、日系移民の重層性や、戦時下の強制収容において記録された差別を明らかにするとともに、米軍の日本占領政策との関係を探究するとともに、その経験を戦後の日系コミュニティ自身がどのようにとらえかえしてきたのかを検証する。このことにより、太平洋を往還した人権をめぐる文化交流史を構想するものである。 さらに、申請後に生起したパンデミック情況でのアジア系への人種差別の噴出やヘイトクライムについても、新たな課題として現地で調査の可能性を探ることとしたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
後述の「進捗状況」で記載の事情から、「研究発表」欄に所掲の成果は大阪公立大学人権問題研究センターの公開講座、第171回「サロンde人権」における口頭発表「被差別部落からのアメリカ移民と戦時強制収容」(2023年2月15日)のみとなっている。これは、前年のサンフランシスコ州立大学におけるシンポジウムでの英語報告に、その後に得られた知見を加えたもので、戦前ハワイやアメリカ西海岸で発行された日本語新聞で日本人移民の間での部落差別が報じられていたこと、戦時強制収容の中でも、収容された日系人を対象とする社会調査の担当者のレポートなどで部落差別が議論されていることなどを紹介し、とくに本研究において注目している事例として、部落出身であるといううわさがひろめられていた人物について、差別が収容所における管理に利用された可能性も考慮しつつ、部落差別がどのように収容所において機能したのかについて問題提起をおこない、強制収容政策そのものの解明と、さらに、それと調査との関係性が検証される必要があると指摘したものである。 渡航期間を通じて、日系アメリカ人3世、4世のコミュニティ活動家や研究者との交流から、強制収容の経験がその後の日系アメリカ人のコミュニティのありかたに深く長い影を落としてきた事情、すなわち戦後も続いた監視による「モデル・マイノリティ」化というエスニック・スタディズの問題意識も、本研究の主題ではないものの、重要な視点として理解した。 なお、本研究の期間内に実現するかどうかは不明であるが、受難と被害の体験として語られがちな強制収容という日系アメリカ人をめぐるマスター・ナラティブの形式をのりこえて、沖縄県出身者や部落出身者などにたいする差別、あるいは構造としてのSettler Colonialismなど、日系アメリカ人研究の新たな課題に光をあてる国際シンポジウムをめざして、協議を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度10月から引き続き本年度2022年9月末まで、すでに報告の通り、サンフランシスコ州立大学(カリフォルニア州立)エスニック・スタディズ学部を拠点に訪問研究者として調査研究にあたり、カリフォルニア大学バークリー校(UC Berkeley)、同ロサンゼルス校(UCLA)、スタンフォード大学、全米日系アメリカ人博物館(ロサンゼルス)、カリフォルニア州立大学サクラメント校、カリフォルニア州立図書館地方史資料室などのほか、東海岸ワシントンD.C.およびその近郊の国立公文書館(NARA)ⅠおよびⅡでも文献調査にあたった。さらにサンノゼ日系アメリカ人博物館やサンフランシスコ市内の民間研究機関である全米日系アメリカ人図書館もふくめて、エスニック・スタディズの一角をなす日系アメリカ人研究の研究者と交流をすすめた。なお、サン・ブルーノにあるサンフランシスコ国立公文書館からは、訪問調査受け入れの回答を得られなかった。 8月中旬には、共同研究者とともに、本研究において注目している強制収容所であるツール・レイク(Tule Lake)史跡を訪問し、日系人強制収容政策についての理解を深めた。 また、最近のアメリカ合衆国大統領選挙での争点のひとつがヒスパニック系移民にかかわるメキシコ国境管理であることに鑑み、さらに日系移民の中にもメキシコ経由で合衆国に入国した例も相当知られていることもあり、メキシコ国境も視察した。 帰国後は、所属大学が統合による新大学の体制になったことに起因する調整業務や新たな授業担当などもあり、現地で入手した史料などの整理検討が滞っており、このため本年度内の論文発表にはいたらず、口頭報告のみとなっている。ちなみにビデオ会議システムを活用したオンラインでの国際研究会を計画したが、報告者都合により延期し、2023年4月開催とした。
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Strategy for Future Research Activity |
基課題である基盤研究(C)「被差別部落からのアメリカ移民に関するトランスナショナルな歴史経験についての研究」研究分担者との共同研究を継続しつつ、成果発表をめざしていく。 また、渡航期間中に交流したアメリカおよび日本の研究者との情報交換を続けながら、補充的な短期の現地調査を準備する。オンラインの国際研究会の開催、アメリカ国立公文書館(NARA)再訪にむけてオンラインで公開されている目録の検討や事前相談、前述の国際シンポジウム開催計画などを進める。 とくに、パンデミックの影響が長期化したなどの事情で延期したハワイ調査が重要であり、日系人の渡航記録を公文書館で調査するほか、ハワイ大学で文献調査、また可能であればインタビュー調査を模索する。その際沖縄県出身者のコミュニティと部落出身者における情況との比較および関係という当初の問題意識にも留意したい。また注目している移民の出身地である山口県、高知県、和歌山県および熊本県などの送り出し地域の調査、現地の関係者との連携などを進めていく必要がある。そのことで、個別事例にそくしつつ、移民の渡航理由、経緯、出身の被差別部落をとりまいていた状況、また渡航後の日本の親族らとの交流、帰国者のその後などを明らかにしつつ、渡航先での足どりをたどり、さらにアメリカ西海岸などへの再移動の過程などの解明をめざす。 また、トパーズ(Topaz)強制収容所跡における監視兵による被収容日系人銃殺事件の追悼碑の発掘のありかたが問題視されている案件など、現地の日系人コミュニティの動向を注視していく。 敗戦後におけるGHQの日本占領政策と日系人強制収容政策との関わりについては、さらなる調査を要するところであり、さしあたっては国立国会図書館憲政資料室をはじめとする日本国内の研究資源や研究蓄積の活用および接続が今後の課題である。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)