Project/Area Number |
19KK0324
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (A))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Field |
Public law
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Research Institution | Hitotsubashi University (2021-2023) Sophia University (2019-2020) |
Principal Investigator |
江藤 祥平 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (90609124)
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Project Period (FY) |
2020 – 2024
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥13,520,000 (Direct Cost: ¥10,400,000、Indirect Cost: ¥3,120,000)
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Keywords | 立憲主義 / オーストラリア / 憲法 / 比較憲法 / 比較法 / オーストラリア法 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、オーストラリアの研究者と共に、日豪の「立憲主義」概念の受容と展開のプロセス、及びその現代的問題点を調査・研究するものである。立憲主義の比較法研究としては、英米仏に代表される「先進国」に学ぶのが通例であるが、本研究は近代化に遅れた「継受国」を対象とするところに独自性がある。日本において立憲主義が国民に十分に浸透しない中で、同じく近代化に遅れたオーストラリアがいかに立憲化を果たしたのか、その経験を参照することは重要である。それを通じて、日本の立憲主義の固有性と普遍性も明らかになるはずである。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の4年目にあたる2023年度は、2023年8月までシドニー大学において研究を実施し、9月に日本に帰国し研究を継続した。以下では、公表された論稿に基づいて研究成果を概観する。 ・立憲主義の相剋ーオーストラリアの1975年憲政危機をめぐって (一橋法学、2023年) 本論文は、オーストラリアにおける1975年憲政危機を題材に、二つの異なる立憲主義観を描き出したものである。オーストラリアは、連邦制と議院内閣制という、アメリカ型とイギリス型の立憲主義を融合させたユニークな統治構造を有している。この二つは、権力分立と議会主権という異なる権力構造を指し示したものである。オーストラリアは、イギリスに倣って議院内閣制を継受したが、同時にアメリカ型の連邦制を採用した。1975年に総督(連邦政府の名目上のトップ)が時の首相を解任したことで、この二つの立憲主義体制が衝突を見るに至った。この事例を通じて本論文が描き出したのは、立憲主義のかたちはその国において様々であり唯一正しい形があるわけではないこと、オーストラリアのように複数の立憲主義のかたちが同一の統治構造に嵌め込まれている可能性があるということである。 ここから得られる日本に対する比較法視座は、日本もイギリスに倣い議院内閣制を採用するとともに、アメリカ型の違憲審査制を採用しており、オーストラリアと同様に英米の融合型を示しているということである。そして、近年みられる立憲主義に対する「挑戦」とされる現象は、実は異なるかたちの立憲主義観が闘わされている可能性があるということである。ただし、そのように整理するにあたっては、日本における議院内閣制がイギリスにおける習律のような規範構造を確立し得ていないところに留意する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、シドニー大学の共同研究者との共同研究であり、パンデミックにより渡航予定が大幅にずれ込んだことから、当初の計画を大幅に見直さざるを得なかった。2022年度9月に渡航を果たし、2023年度8月に帰国した。共同研究によって得られた所見は多かったが、その研究成果をまとめるには今しばらく時間を必要とする。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はパンデミックの影響で進捗が大幅に遅れていたが、シドニー大学における共同研究が完了したことで、今後は総合的にまとめをする段階に入る。具体的には、これまでの研究を公表成果にまとめつつ、国内外において学会での発表を通じて批判を仰ぎ、研究内容をより批判に耐えうるものに発展させる必要がある。また、これまでは日本から見たオーストラリアに共同研究の時間を多く割いてきたが、今後はオーストラリアから見た日本について共同研究者の協力を得つつ、研究成果をまとめるつもりでいる。
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