遺伝子改変動物を用いた恐怖情動記憶消去の分子神経機構の解明
Project/Area Number |
20019040
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Biological Sciences
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
湯浅 茂樹 National Center of Neurology and Psychiatry, 神経研究所微細構造研究部, 部長 (70127596)
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Project Period (FY) |
2008 – 2009
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2009)
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Budget Amount *help |
¥3,800,000 (Direct Cost: ¥3,800,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2008: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Keywords | 恐怖条件付け / 情動記憶 / 消去 / Fynチロシンキナーゼ / 海馬 / 脱リン酸化酵素 / 細胞内情報伝達 / 文脈的記憶 / Fyn チロシンキナーゼ / 扁桃体 / NMDA受容体 / 記憶の消去 |
Research Abstract |
情動記憶には扁桃体、海馬を中心とする神経回路が関与し、記憶の獲得、固定化の過程に加え、消去も能動的な過程と考えられるようになっている。恐怖情動記憶の消去機構の障害はPTSDの病態と密接な関連があると考えられていることから、その分子神経機構の解析は基礎的な記憶のメカニズムの解明とともに、分子標的を明確にとらえたPTSD治療法の開発にもつながる。恐怖情動記憶の消去においては情動記憶の形成に関わる分子の一部に発現変動が認められ、情動記憶の形成と消去ではこのような分子が相反した発現プロフィールを示すことが報告されている。そこで、本研究では、マウスを用いて文脈的恐怖条件付けをおこなった後、条件刺激のみの提示により恐怖記憶の消去をおこない、その過程におけるFynシグナル伝達系の関与について行動学的ならびに生化学的な解析をおこなった。 野生型マウスの恐怖記憶消去過程において海馬の活性化型Fynは減少した。そこで、野生型マウスについて恐怖条件付けをおこなったのち、海馬にSrcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤PP2を定位的に注入し、引き続いて恐怖記憶の消去を行ったところ、対照にくらべて消去が促進されることが明らかになった。一方、活性型Srcファミリーチロシンキナーゼの脱リン酸化酵素SHP1/2の阻害剤NSC87877を注入すると、消去が抑制されることが明らかになった。 以上の結果から、Fynの活性化は恐怖記憶の形成時に亢進するのに対し消去過程では低下すること、海馬Fynの活性抑制によって恐怖記憶消去が促進されることが明らかになった。また、シグナル伝達系上流に位置して活性化型Fynの低下に関与する脱リン酸化酵素が恐怖記憶消去の制御に関わることも明らかになった。さらにFynシグナル伝達系の下流分子は恐怖記憶の形成と消去で異なることが示唆され、記憶形成においてはMMDA受容体活性化が関与するのに対し、記憶消去においては細胞骨格系を介したシナプス構造変化の誘導が関与する可能性がある。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)