Budget Amount *help |
¥2,900,000 (Direct Cost: ¥2,900,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2008: ¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
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Research Abstract |
超分子の構造決定をする際に固体NMRは強力な実験法となる.しかしながら,固体NMRは幅広く複雑な形状のスペクトルをもつため,同定に曖昧さが残るのが現状である.この実験に伴う曖昧さを補うためには,固体NMRに対する理論的アプローチが必要となってくる.本年度は,NMR計算に対する量子化学的なアプローチと固体物理的なアプローチを融合させ,両者の欠点を補い,長所を活かすことにより,固体NMRに対する信頼性の高い理論的計算スキームを提案した.そして,その精度を検証することで有用性を示すことができた.量子化学と固体物理のアプローチを融合させるために,ONIOM法を用いた.ONIOM法では,ターゲットにするのは現実系に対する高レベルの計算で,この計算は現実的には困難であると仮定する.それに対し,現実系に対する低レベルの計算とモデル系に対する高レベルの計算は可能であるとする.これらの計算可能な結果を使ってターゲットの結果を外挿的に得る.ONIOM法の長所は,現実系の高レベル計算のエネルギー微分を簡単に見積もることができる点にある.NMR化学シフト計算に必要な核磁気遮蔽定数は核磁気モーメントと磁場に関するエネルギーの2階微分で定義されるが,ゆえにONIOM法をNMR化学シフト計算に容易に適用することができる.本アプローチの特徴をまとめると以下のようになる.(1)低レベルに使う擬ポテンシャルや汎関数の違いによる影響は小さい.平面波の数の影響も小さい.低レベルで荒い計算をすることが可能で効率的であるといえる.(2)内殻電子の寄与も考慮することができ,重原子のNMR計算が可能である.
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