Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
本研究では、電子のストレステンソル密度を用いた電子状態の記述を元に、新しい化学結合の理論を展開した。この理論では、空間の各点で定義される電子ストレステンソル密度が中心的な役割を果たすが、そこから導かれるテンション密度、エネルギー密度、領域化学ポテンシャルというやはり局所的に定義される量を用いて、化学結合や反応性を新しい方法で表現できる。これは従来の電子密度や軌道を主とする方法とは異なる視点を与えるにとどまらず、実用上にも有利な点がいくつも見出されている。今年度の研究は以下のようなものが含まれる。(1)エネルギー密度を定義したことから、反応において、どの部分が安定化しているかを示すことができる。詳しくは、反応後の分子のエネルギー密度と、反応前の分子のエネルギー密度の差をとることを行い、これを相互作用エネルギー密度と呼ぶ。このことを三塩化ホウ素と水または水酸化鉄(III)との反応において示した。どうようの差分を電子密度についても計算して比較することで、電子密度の増加と安定化が対応している(が、全く同じではない)ことが見出され、安定化を直接エネルギーで見ることができることを例示した。(2)水素分子イオンの厳密解を用いて電子ストレステンソル・テンション・相互作用エネルギーを基底状態と励起状態について計算し、それらの様子を正確に調べた。ストレステンソルの最大固有値が正の部分でかつその固有ベクトルが核間をつないでいる構造(スピンドル構造)の正確な形が見出され、それは核に接していることがわかった。基底状態と励起状態との比較では、基底状態で最大固有値正の部分が見いだされたのに対して、励起状態ではそのような構造はみられず、ストレステンソルは結合をよく表わしていることが示された。
All 2010 2009 2008
All Journal Article (8 results) (of which Peer Reviewed: 8 results) Presentation (37 results)
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