新規オレフィン重合反応を志向した希土類金属錯体触媒の精密設計
Project/Area Number |
20038048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Science and Engineering
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 裕美子 Kyoto University, 化学研究所, 助教 (80462711)
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Project Period (FY) |
2008 – 2009
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2009)
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Budget Amount *help |
¥3,200,000 (Direct Cost: ¥3,200,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2008: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
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Keywords | ホスファアルケン / 鉄 / 鉄錯体 / 低原子価錯体 |
Research Abstract |
P-C二重結合を有するホスファアルケン系配位子は、σ供与性に加えて、極めて高いπ受容性を有する。その結果、これを支持配位子として用いれば、電子豊富な後周期金属錯体においても、オレフィンが積極的に配位する電子欠損型の金属中心を構築できることが見出されている。初年度には、三座のホスファアルケン系配位子であるビス(ホスファエテニル)ピリジン配位子(BPEP)を有する種々の鉄錯体を合成し、酸化還元挙動など、それらの電子的性質を精査した。なかでも、モノブロモ錯体[FeBr(BPEP)]は、四配位錯体としては珍しい三角錐構造をとることから、特異的な電子構造を取ることが示唆された。本年度は各種スペクトルおよび理論計算により、[FeBr(BPEP)]がhigh spinのFe(I)という鉄錯体には珍しい電子状態を有することを明らかにした。DFT計算により、構造最適化を行うと、[FeBr(BPEP)]は実験と同様、歪んだ三角錐構造をとり、一般的な平面四角形よりも12kcal/mol安定であることがわかった。また[FeBr(BPEP)]は、鉄d軌道とBPEP配位子のπ*軌道との結合性相互作用に基づく軌道を有し、ここに電子を非局在化させることで、Fe(I)中心を安定化させていることが明らかとなった。さらに、Fe(d)とBPEP(π*)の間の強い結合性相互作用は、錯体の三角錐構造に大きく寄与していることを見出した。これまで、鉄錯体の高い反応性は多くの注目を集めてきたものの、その触媒反応への応用例は、未だ数が限られているといえる。これは、鉄錯体の電子構造が変化に富み、これに対応して多様に変化する反応性の制御が困難であることが大きな理由といえる。本研究全体を通して、BPEP配位子が変化に富む鉄中心の電子状態に柔軟に対応可能であることが示されたといえ、本錯体系の、オレフィン重合を含む種々の反応への応用が今後期待される。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)