Budget Amount *help |
¥6,200,000 (Direct Cost: ¥6,200,000)
Fiscal Year 2009: ¥3,100,000 (Direct Cost: ¥3,100,000)
Fiscal Year 2008: ¥3,100,000 (Direct Cost: ¥3,100,000)
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Research Abstract |
本研究は, シトクローム酸化酵素(CcO)による生物機能の発現機構を, 電子構造に基づいて解明することを目的として推進している。本年度は以下の研究成果を得た。1)CcOの生物機能において, ヘムaおよびヘムa3はその鍵を握る部位である。本年度は, これらをタンパク質外部に取り出し, 単体で存在する場合の電子構造を計算することにより, 逆にCcO内部のヘムの電子状態を解析するストラテジを提案した。その結果, CcO内部ではヘムーリガンドの結合は最安定とは異なる状態にあり, CcOの疎水性アミノ酸残基が, ヘムーリガンド結合に一種のストレスを与えることにより, CcOの機能発現に必要となる電子構造を創出している可能性が明らかになった。2)CuAサイトは, シトクロームcとの電子授受において, 最初に重要な役割を果たす2核銅結合部位である。その解析のために, 銅結合構造が既に詳細に解析されているアズリンをテスト系に用いて, 新規に開発した我々のQM/MM計算システムの評価をまず行った。その結果, 従来の第一原理計算では再現できなかったアズリンにおける銅結合構造が, 本研究により初めて正確に得られることを示した。そこでこの計算システムをCuAサイトに応用したところ, 正確な酸化還元電位が理論的に得られることもわかった(実験値とよい一致をみた)。さらに, 「CuA単独」および「その周囲のタンパク質構造を含む場合」の両者について, 電子構造計算を行い比較したところ, 酸化還元電位には約2倍もの差が生じ, 特にヘムに結合したプロピオン酸部分との相互作用が, CuAの機能に影響を与えることが示唆された。これは, CcO内部において各機能中心が単独で作用するのではなく, 物理的な相互作用に基づく, 機能中心同士のコミュニケーションが機能を制御していることを示すものである。
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