Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
哺乳動物の幹細胞は、分化能を保って分裂する能力(自己複製能)をもつ。その分子機構は、幹細胞特異的転写因子による分化能維持・細胞老化因子群の統合的制御機構であるが、その構成遺伝子や転写制御様式については大部分が不明である。本研究は、これを規定する遺伝子群の同定を通じて、発生学と細胞老化を転写因子の観点から結合させる。神経幹細胞および栄養幹細胞は、分化能は異なるもののどちらも転写因子Sox2を強く発現し無限に自己複製する。Sox2は両者の正常な自己複製に必須なので、本研究では両細胞においてSox2下流遺伝子を網羅的に探索し、共通の下流遺伝子について機能解析を行って、無限自己複製機構を明らかにすることを目的とした。神経幹細胞(NSC)と栄養幹細胞(TSC)はES細胞(ESC)からの樹立法が確立されているため、申請者が樹立した誘導的Sox2ノックアウトESCを利用して誘導的Sox2ノックアウトTSC,NSCをそれぞれ樹立できる。20年度までに、テトラサイクリン制御性Sox2ノックアウトNS細胞NS22-2を樹立し、テトラサイクリン添加によって自己複製が阻害されることがわかった。ところが、高密度培養条件下では自己複製が保たれることも同時に明らかとなった。21年度では、細胞間シグナルの阻害によるSox2ノックアウトのフェノタイプ顕在化を試み、Notchシグナル阻害剤を用いての解析を行ったが、効果はみられなかった。マイクロアレイ解析に進むことが困難と判断したため、より直接的な機能解析法として、NS細胞における中心的転写因子を数個同定し、これを用いて繊維芽細胞MEFからNS様細胞を誘導できることを明らかとした。この転写ネットワークをさらに解析することで、自己複製機構の解明につながる。
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