Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
受容体アダプター分子(以下、アダプター分子)は、細胞表層膜に局在する受容体からのシグナルを伝えるとされるが、その生理的役割や下流のシグナル系に関しては、いまだに多くの点が不明である。ある種のアダプター分子は、中枢神経系の中では小脳プルキンエ細胞で発現が高いことから、小脳機能への関与が推測される。そこで、アダプター分子遺伝子欠損マウスの小脳機能について調べたところ、回転棒テスト、瞬膜反射条件付けにおいて顕著な異常が認められ、小脳失調を示すことが明らかになった。引き続き、急性小脳スライス標本を作製し小脳依存的な記憶・学習の細胞レベルでの基盤とされる平行線維-プルキンエ細胞シナプス(平行線維シナプス)の可塑性、長期抑圧を調べたところ、やはり明瞭な阻害が見られた。一方、小脳皮質回路網の発達形成は調べた限り正常であった。さらに、長期抑圧阻害の原因を調べる一環で、細胞内ストアからのカルシウム放出について調べたところ、カフェイン依存的なカルシウム放出、代謝型グルタミン酸受容体刺激によるカルシウム放出、いずれにおいても著しい阻害が認められた。したがって、このアダプター分子は、小脳プルキンエ細胞におけるカルシウム放出系の制御、ひいては小脳機能の発現に重要な役割を担っていることが示唆される。今後はアダプター分子による機能制御を受ける標的分子の同定と、その制御機構の解明を目的として更に研究を進める予定である。
All 2009 2008
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Cerebellum 7
Pages: 385-391