Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
本研究は、アジアに進行する伝統武術の観光化現象を取り上げ、その発生経緯と観光化武術の文化性について明らかにすることを目指すものである。三年度計画の最終年度に当たる本年度は、中国、タイ、そして国内では沖縄と青森において観光化武術の調査と情報収集をおこなった。中国では、北京で「功夫伝奇」を上演する紅劇場、そして天津の小南河村に進行中の霍元甲記念パーク・プロジェクトを調査し、アモイでは集美大学武術学院において少林寺をめぐる近年の観光化情報の収集をおこなった。紅劇場で上演されるカンフー・ショーについては、そのストーリー展開とナレーションの言説分析の必要性のあること、また、雷元甲記念パーク・プロジェクトについては、中国本土のみならず、台湾や東南アジア各地にその支部をもつ精武会の更なる情報収集が必要であること、当プロジェクトが中国で現在進行中の政府が進める武術観光政策「武術の里」の典型例として分析可能であることが理解された。タイでは、ムエタイのジムにおいて、外国人教習生とジム経営者に聞き取りをおこない、また観光民族村において、ムエタイと武器武術(クラビクラポン)の上演と後継者養成に関わる聞き取りをおこなった。日本では、9月に青森でおこなわれた第2回流鏑馬国際大会の調査をおこなった。日本、韓国、モンゴル、アメリカ、ドイツ、オーストラリアの6カ国が参加したもので、新幹線の青森開通に伴う観光行事として計画されたものであった。国際大会を可能にするルールの標準化がどのようにしてなされたのか、その際、伝統武術の変容にどのような問題が発生したかが分析されることになる。最後に、過去三年度間に収集された情報を基に、観光化伝統武術の発生問題とその文化性が論じられるが、発生因として国レベルの政策、また文化性については、創られた伝統に関わるセルフオリエンタリズム性が注目される、