Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
ヒトのゲノムに散在する巨大なイントロンのスプライシング機構として提唱した『イントロン内スプライシング仮説』を証明する事が研究計画の目的であり、ジストロフィン遺伝子をモデルとして、実際にそれを支持する実験データが得られた。さらに、新しい現象『成熟mRNAの再スプライシング』を発見し、興味深い事にイントロン内の入れ子スプライシングが完了した後、イントロン全域を取り除くスプライシングが起こる事『イントロン内スプライシング』と、通常のスプライシングが完了した後にできる成熟mRNAが、その中に存在する選択的スプライス部位を使ってさらにスプライシングされる事『成熟mRNAの再スプライシング』は、どちらもスプライシング完結後に再びスプライシングが起こっている現象であり、それ故機構的に共通点がある事がわかった。癌抑制遺伝子としても知られるTSG101遺伝子は、癌細胞において、巨大な複数のイントロンを挟んで大きく離れたエクソン内部の潜在的5'と3'スプライス部位の間で異常スプライシングをひき起している。私たちは、この異常スプライシングの過程において、正常スプライシングによってできた成熟mRNAが、再びスプライシングされている事実、すなわち『成熟mRNAの再スプライシング』を厳密に証明した。さらに、この現象は、他の癌抑制遺伝子であるFHIT遺伝子でも起こっている事を示した。癌細胞において成熟mRNAに再スプライシングが起きるという事実は、正常細胞では一旦成熟したmRNAが更なるスプライシングを受けないようにしている抑制機構の存在を示唆している。蛋白質翻訳の鋳型としてのmRNAを作る機構を知る上で、未解決の問題-細胞核はスプライシングの終了をどうして知るか?-を如実に提起する。一方、癌化により再スプライシング抑制機構が破綻したとすると、成熟mRNAに潜在的なスプライス部位は数多く存在する事から、多くの遺伝子において成熟mRNAの再スプライシングが起きている事が予測される。癌細胞では、ゲノムに突然変異がないにも関わらず、多くの異常スプライシングが起こり、異常蛋白質が蓄積する事実がある。もしかすると、成熟mRNAの再スプライシングが鍵を握っているのではないだろうか?このきわめて重要な仮説を検証するのが今後の研究テーマとなった。以上、「挑戦的萌芽研究」としての目的を十分に果たせた3年間となった。
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