Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
本年は昨年度の「リューベック事件」についての執筆の結果明らかになってきた、19世紀のドイツ医師会の成立と、生理学の学的成立の問題を中心に研究を進めた。特に、近代医学の制度的確立の問題は、実に18世紀後半から始まった「臨床医学」の確立への努力に内在した治療のコンセプトの対立、「自然治癒説」と「人工治癒説」の対立のひとつの解決の方向を示しているが、その解決において、治療のコンセプトの歪曲化が生じたのではないか。近代医学は19世紀半ば以後「実験医学」の方向をとり、人間の自然科学的理解を前提し、「病気」を自然科学的に理解し、そのメカニズムから「治療法」を確立する道を歩んできた。このことによって、「実験対象」としての人間もまた「対象動物」と同等の扱いを受け、その結果として「人体実験」の正当化が行われ、悲劇的な「リューベック事件」を迎えることになった。この背後に「近代医学」と「自然療法」の対立があり、前者が後者を駆逐するプロセスでもあり、職業として「近代医学」が確立することになる。そこに、「医学の危機」という近代医学と自然療法の相克という事態が生まれていた。この相克はまさに「近代医学」が職業としての危機にあるという経済的な問題とともに、コンセプトそのものの危機でもあり、今日の「医療倫理」の方向が生まれてきた。
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生と死(東洋英和大学大学院死生学研究会)
Volume: 12 Pages: 10-22
40019161711
白山哲学 44
Pages: 81-109
Goethe-Jahrbuch 51
Pages: 69-83
40017360563
白山哲学 43
Pages: 107-136
40016621600
東洋学研究 46
Pages: 33-51
40016765572
コープしずおか「2020年に向けた宣言」報告書
Pages: 22-28