Budget Amount *help |
¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 2010: ¥400,000 (Direct Cost: ¥400,000)
Fiscal Year 2009: ¥200,000 (Direct Cost: ¥200,000)
Fiscal Year 2008: ¥200,000 (Direct Cost: ¥200,000)
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Research Abstract |
文学は自己組織的な原理によって作動する複雑系の一つである。2003年度および2006年度のドイツ出版図書目録を利用し,現役作家,継承作家それぞれについて,文学シーンに流通中の作品数を調査した所,(a)いずれの年度,いずれの作家タイプでも,シーン規模=作品数(x)とその規模を有する作家の存在確率(y)との間にy=C・x^<-α>のベキ則が成立し,また,その背景として,(b)現役,継承作家とも,2003年度のシーン規模(S1)と2006年度の規模(S2)との間で確率乗算的成長過程(S2=R(t)・S1)が成り立っていることが明らかになった。これらは,事前のコミュニケーションの定着度・活性度が次の時点でのコミュニケーションの定着度・活性度に影響を与える,システムの自己組織性を現している。つまり,文学プロセスは,コミュニケーションプロセスであると同時に関係形成的な選択過程でもあり,無数の選択可能な作家・作品を前に(複雑性の側面),事前の読書体験や評判などで形成された読むべき作家や作品像を手がかりに(参照点としての文学像),コミュニケーションの回路の選択的形成が行われる(秩序の側面),複雑系を成しているのである。これは,運動体としての文学システムが,文化面(文学像)と社会面(量的に展開されるコミュニケーション)が相互にフィードバックを及ぼしあう,フィジカルな相を持ったハイブリットなシステムであることも表している。ここから,(1)旧来のオートポイエシス論的システム観やコミュニケーション論的プロセス把握を超えるナチュラル・システムとしての文学過程把握の必要性,(2)複雑理論などシステム/進化理論からの知見利用に基づく文化調査の新たな研究パラダイムの可能性,(3)マクロな側面からの文学の経験的調査の意義を,確認することができた。
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