Budget Amount *help |
¥3,300,000 (Direct Cost: ¥3,300,000)
Fiscal Year 2009: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
Fiscal Year 2008: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
6族元素のMoとWは,酸化的な海水にはMoOn_4^2-,WO_4^2-として存在し,ともに保存性成分的な分布を示す.しかし, 強還元的環境でMoは硫化物として沈殿するが,Wは沈殿しない.したがって,堆積物中Mo/W比は,よい酸化還元プロキシになると期待される.しかし,その定量は困難であった. 我々はマイクロウエーブ分解-ICP-MSによる堆積物中Mo,Wの分析法を開発した.分解にHC10_4を用いないこと,操作を通してブランク値を低く抑えることにより,簡便かつ精確な分析を実現した. 31の堆積物試料について,MoとWを希釈法と固相抽出法で定量した.両元素とも,二つの方法の測定値は数%の誤差範囲内で一致した.希釈法は,簡便であり多試料の濃度定量に適している.固相抽出法は,MoとWを主要成分から分離できるので,MoとWの安定同位体比精密測定に適している. 北海道岩内沖(43°23'N,140°04'E,水深900m)堆積物コアの各層から採取した99試料について,24成分を定量し,過去4万7千年の酸化還元状態の変遷を考察した.Mo/W比は,酸化的環境の堆積層では約3であり地殻存在度と等しいが,4.6万年前,3.1万年前,1.9~1.5万年前,および1万年前には9~26まで増加した.全硫黄とよい相関を示した(r=0.58).さらに,Mo/W比異常の年代は,日本海の他海域での先行研究において,強還元的環境が出現したと報告されている年代とほぼ一致した.以上の結果は,Mo/W比がよい酸化還元プロキシであることを強く示唆している. 今後,堆積物中MoとWの安定同位体比測定法を開発し,その酸化還元プロキシへの応用を検討する.本研究の成果を論文にまとめ,地球化学の国際誌に投稿する.さらに,本法を地中海,太平洋などさまざまな海域の古海洋研究に応用する.
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