Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
1. 目的;骨髄移植など造血幹細胞を用いた治療法における問題解決を目指し、末梢血白血球(T-リンパ球)から造血幹細胞を誘導する方法を開発する。2. 方法;T-リンパ球に転写調節因子を始めとする遺伝子群を導入し、その発現様式を造血幹細胞に限りなく近づけることによって、造血幹細胞の誘導を目指す。3. 結果;これまでの検討から、造血幹細胞に高発現する遺伝子数種類を導入したT-リンパ球を数日間培養すると、造血幹細胞特異的マーカーであるCD34やc-kit発現細胞が誘導できることを明らかにした。さらに、ピストン脱アセチル化(HDAC)阻害剤とDNAメチル化阻害剤(アザシチジン)の併用により、CD34陽性細胞の誘導効率を向上させた。今年度はさらなる効率の向上を目指し、HDAC阻害剤とT-リンパ球に特異的に発現する遺伝子のノックダウンの併用について検討した。まず、HDAC阻害剤であるバルプロ酸、ロミデプシン及びトリコスタチンA(TSA)の中では、TSAが細胞毒性が少なく、最も高いHDAC阻害作用を示した。続いて、T-リンパ球に高発現する遺伝子として、転写因子GATA3を同定した。GATA3はリンパ球分化の制御因子であり、分化の方向付けに重要なことが報告されている。そこで、sh-RNAのレンチウイルス導入系を作成し、GATA3の発現ノックダウンの併用を試みた。その結果、CD34陽性細胞の誘導効率の改善は見られなかったが、メチルセルロース半固形培地において造血幹細胞由来のより大型のコロニー形成を誘導することができた。以上の結果から、末梢血白血球(T-リンパ球)にホメオボックス転写因子群及びGATA3に対するsh-RNAをレンチウイルスを用いて導入し、TSA及びアザシチジン添加下で培養することで、CD34陽性細胞とコロニー形成能を有する造血幹細胞様の細胞を誘導することができた。