Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
平成20年度は、(1)水溶化が著しく困難とされるタンタルの水溶化を可能とする新しい親水錯体化技術の開発を実施すると共に、(2)新規水溶性タンタル錯体を用いた水溶液プロセスにより様々なタンタル含有複合機能性セラミックスの合成と高機能化を目指した研究を実施した。具体的な成果は以下の通りである。(1)5塩化タンタルのメタノール溶液にアンモニア水を添加して得られるタンタル酸沈殿をアンモニア存在下、過酸化水素水で処理することで透明な水溶液を得た。この水溶液を更に乳酸で処理することにより、水に安定的に溶解する水溶性乳酸タンタル錯体を得ることに成功した。タンタルが溶解している水溶液から単結晶を育成することにより、その結晶構造も明らかにされた。この錯体はタンタル・オキソ・ペルオキソ・乳酸アンモニウムであることが判明した。(2)上記水溶性タンタル錯体を用い、水溶液プロセスにより、カリウムタンタルボレート系ならびにアルカリ金属タンタル酸系水分解光触媒の合成に成功した。カリウムタンタルボレート系酸化物は、ホウ素が有機化合物と化合し揮発性物質になるため、通常の有機系合成法では目的物質を得ることが困難になるが、水溶性タンタル錯体を用いた水溶液法では有機物の量を極小化できるため、目的物質を低温で単一相として合成することができた。低温合成の結果、比表面積の大きい粉体を得ることができ、水分解光触媒活性の向上に成功した。同様に、タンタル酸リチウムやタンタル酸ナトリウムなどの複合酸化物を水溶液プロセスにより簡単に合成することができ、高活性な水分解光触媒として供することに成功した。従来、タンタル含有セラミックスを溶液から合成するためには、高価なタンタルアルコキシドを用いた有機溶媒プロセスが必須であったが、本研究により、安全で環境負荷の低いタンタル含有セラミックス合成への道が切り開かれた点に意義がある。
All 2009 2008
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (4 results)
Ceramic Society of Japan 117(3)
Pages: 308-312