Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
サルモネラは、急性腸炎などを引き起こす代表的な食中毒菌であり、わが国のみならず世界各地において集団食中毒を引き起こす。サルモネラは家畜排泄物由来のコンポスト中にも残存することが最近報告されたため、農産物の安全性および公衆衛生の観点から、安価かつ効果的にコンポスト内のサルモネラを殺滅する方法を確立することが急務である。そこで本研究では、バクテリオファージを用いてコンポストのサルモネラを防遏することを目的として、本年度は畜産環境からのサルモネラ溶菌性バクテリオファージの単離およびコンポスト中残存サルモネラの殺菌試験を行った。プラークアッセイにより、東北大学附属フィールドセンターの廃水貯留槽より採取した試水からSalmonella Typhimurium EF85-9株に溶菌性を示すバクテリオファージを分離した。透過型電子顕微鏡による形態観察により、分離ファージはマイオウイルス科に属した。滅菌コンポスト0.5gを分注したコニカルチューブにトリプトソイ(TS)培養液で培養したサルモネラを10^5接種し、1菌数あたりのファージ数(MOI)が1700になるようにファージを添加して37℃で培養し、経時的に残存サルモネラ数をTS寒天培地で計数することにより、ファージによるサルモネラ殺菌能力を評価した。この際、ファージを入れずに等量のTS培養液を添加した区をコントロールとした。その結果、試験時の水分含量51%、MOI1700の条件下で、ファージ接種によりコンポスト内のサルモネラ数は4時間後にコントロール区に比べ80%抑制された。以上の結果より、バクテリオファージを用いてコンポスト内のサルモネラ数を減少できることが示された。一方で、接種したバクテリオファージに対する耐性菌の出現によりファージ接種効果は低減する場合も示された。