Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
成人T細胞白血病(Adult T cell Leukemia : ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルスタイプ1(Human T-cell leukemia virus type I : HTLV-I)の感染によって引き起こされる予後不良の腫瘍性疾患である。わが国はHTLV-Iの流行地域のひとつであり、現在国内に約120万人のキャリアが存在している。今後そのうちの5万~10万人がATLを発症すると推測されており、発症メカニズムの解明や治療法の開発は、差し迫った研究課題となってきている。我々はヒトT細胞性白血病(ATL)のモデル動物の作製を試みlckプロモーターで発現をコントロールしたHTLV-1のTaxトランスジェニックマウスを作製した。このマウスは生後10から23ヶ月後にT細胞性のリンパ腫・白血病の発症が認められ白血病細胞は形態学的にflower cells様の末梢血像を示し、発症した個体ではカリニ肺炎等の日和見感染がみられヒトATLに類似した病態を示した。本マウスの白血病では、ヒトATLと同様にNF-kappaBの恒常的活性化が認められるため、この経路を標的とした治療法の基礎的検討を本モデルマウスを用いて行った。実験ではNF-kappaBの上流でIKKbetaを阻害するNF-kappaB阻害剤:Bay65-1942を用いた。Bay65-1942を培養液中に添加することで、in vitroでマウスATL細胞に対してアポトーシスを誘導し、DNAの断片化を引き起こすことが、アガロース電気泳動法およびTUNEL法にて確認された。ウエスタンブロット法では薬剤処理によりCaspase 3および9の活性化が3時間後から観察されるのに対し、Caspase8の活性化は12時間後まで観察されなかった。さらにCaspaseの活性化と平行してBcl2の発現が著明に減少していた。以上の結果からNFkB経路の抑制を介してBcl2発現量が減少することで、ミトコンドリア経路を介したアポトーシスが誘導される薬剤作用機序が考えられた。次にNOD-SCIDマウス腹腔内にマウスATL細胞を1x10^6個移植し、薬剤を腹腔内投与することでin vivoでの薬剤の効果を検討した。薬剤未投与群では生存期間が30日前後であったものが、Bay65-1942を800ug/day投与した群では最大で42日間生存するものが観察され、約1.3倍の延命効果が認められた。また投与群では組織への腫瘍細胞の浸潤の程度が低く抑えられていることが病理組織学的に確認された。以上の結果からBay65-1942によるNF-kappaB経路の阻害は、今後ATL治療法候補のひとつとなり得る可能性があると考えられた。
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