Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
頸部血管狭窄症に対する血管内治療の初期成績は良好ながら、中〜長期の再狭窄の問題が残されている。バルーン血管拡張術単独では急性解離が多く長期開存率が低く、これを補うためにステントを併用しても一定の率で再狭窄が認められる。薬剤コーティングステントや血管内放射線照射などが応用されてきたが、薬剤の副作用・放射線被曝などの問題があり、部位によっては再狭窄の予防効果が乏しいとの報告が見られる。加えて、細い屈曲・蛇行した血管や起始部病変では、ステント併用による不自然な血管伸展による血管解離・ステント突出による血液乱流などが原因で再狭窄率が高いと考えられている。ステント等の機械的サポートを行わず、従来の血管走行を維持しながら狭窄部を拡張し再狭窄を予防する治療法として、"冷却バルーン"を用いた新世代の血管拡張術が四肢末梢血管領域で報告され始めている。一酸化窒素が気化する際に熱を奪う現象を利用して、バルーン拡張を加えながら病変を冷却することにより、平滑筋細胞などがアポトーシスを起こすため、他の治療法(薬剤コーティングデバイス・血管内放射線照射など)に比べ、少ない炎症反応、薬剤の副作用や放射線被曝なしに再狭窄を予防できる。頭頸部閉塞性血管病変の中でも、解剖学的特性や狭窄機序の点から、鎖骨下動脈・鎖骨下動脈椎骨動脈分岐部狭窄症に対する冷却バルーンを用いた血管拡張術の治療効果は高いものと予想される。上記根拠・理論に基づき、頭頸部主幹動脈狭窄症に応用できる安全かつ信頼性の高い冷却バルーンの開発に向け、本年は既存のカテーテル・ワイヤー・PTAバルーンなど各種血管内治療デバイスの基本構造の解析を行った。また関連学会・研究施設等で情報収集を行い、至適サイズ・構造などを検討中である。