Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、まず野生型マウス、klotho遺伝子欠損マウスの顎下腺を用いて、経時的形態変化を観察した。4週齢の野生型マウスでは、顆粒管が分化し始めており、5週齢ではその割合が増加した。一方、4週齢klotho遺伝子欠損マウスの顎下腺は、野生型よりも小さく、小葉間結合組織が多かった。また、齧歯類に特徴的な顆粒管が欠失しており、その状態は5週齢klotho遺伝子欠損マウスでも同様であった。klotho遺伝子欠損マウスにtestosteroneを1週間投与すると、顆粒管が分化していた。klotho遺伝子欠損マウスは、生後3週までは野生型マウス同様に発育するが、それを越えると発育が止まり、皮膚の萎縮、骨粗鬆症、異所性石灰化、肺気腫、性腺の萎縮などのヒト老化症状と類似の症状を発症し、また、血糖値や血清insulin値の低下といった代謝性異常を伴う単一遺伝子欠損マウスである。老齢動物は、それまでの育った環境が個体差として現れることが大きな問題であるが、この老齢モデルマウスを用いることで、個体差の問題が解決でき、客観的評価ができる。また、唾液腺は、年齢とともに腺房が萎縮し、小葉問結合組織が増加していく。加齢や全身疾患等による唾液腺機能の低下は、根面齲蝕、歯肉縁下齲蝕、歯周疾患に罹患しやすくなり、QOL(Quality of Life)やADL(Activities of Daily Living)の低下を招き、これからの超高齢化社会の大きな問題になってきている。口腔組織における老化徴候および老化関連遺伝子に関する研究は非常に遅れており、この研究は、唾液腺とklotho遺伝子の関係だけでなく、遺伝子と老化の理解にも通じ、非常に意義深いものと考える。