Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
【研究目的】本研究は、施設における独歩可能な中等度認知症高齢者の、便秘と便秘に関連したBPSDを回避するために、排便障害を示す兆候を看護師がよみとることができるようなチェックリストの試案の作成を目的とした。【研究協力者】認知症看護認定看護師または、認知症看護の熟練看護師10名(男性3名、女性7名、平均看護師経験年数15.5年、平均認知症看護勤務経験10.8年)。【研究方法】研究協力者に半構成面接にて、インタビューを実施した。インタビュー内容は協力者の同意を得たうえでメモ及びICレコーダーに記録した。記録したインタビューデータを逐語録として書き起こし、質的分析を行い、排便障害早期発見のための、観察ポイントと介入方法を抽出した。【結果】インタビューの結果、中等度認知症高齢者の場合、記憶障害により、排便の有無を本人に確認することが困難なため、看護師が入院後3日から1週間は意識的に観察する必要性が明らかとなった。また周辺症状に対する薬物コントロールの影響、見当識障害によるトイレにたどり着くまでに便意が消失してしまうことにより、排便障害が発症することも明らかとなった。これらの困難に対し、認知症看護認定看護師や熟練看護師は、認知症高齢者の記憶障害、認知機能障害に加え、実行機能障害をアセスメントすることはもちろん、入浴など全身状態が観察できる機会を有効に活用して、視診・触診・聴診など五感を使って腹部状態のアセスメントを行っていた。また、下着に便の付着がないかを確認し、排便状態の確認を行っていた。さらに、食事摂取量が減っている、爪の間が黒く汚染しているやトイレットペーパーを探すなど、認知症高齢者の行動をありのまま記述し、スタッフと共有していくことで、排便障害時に発せられるサインをみつけ、ケアの糸口を見出していた。