Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
組織工学の発展のためには幹細胞の分化を制御する技術の開発が必要である。生体内で幹細胞が組織細胞へと分化する際、その周囲の細胞外マトリックス(ECM)が幹細胞の分化段階に応じて変化し、幹細胞の分化を制御している。しかし、幹細胞の分化におけるECMの役割については十分に解析されていない。本研究課題では、分化の各段階におけるECMを生体外で構築し、間葉系幹細胞(MSC)が骨芽細胞へと分化する際のECMの影響について検討した。MSCを未分化の状態、あるいは骨芽細胞へと分化する条件で培養し、細胞直下に各ECMを沈着させた後、細胞のみを除去することにより、細胞が形成したECMを得、未分化な細胞、分化初期の細胞、分化後期の細胞が形成したECMをそれぞれ、幹細胞ECM、骨分化初期ECM、骨分化後期ECMとした。次に、これらのECM上に再度MSCを播種して培養したところ、幹細胞ECM上ではMSCの増殖が促進された。一方、上記三種のECM上でMSCを骨芽細胞へと分化誘導を行った後、アルカリフォスファターゼ染色を行った。その結果、骨分化初期ECM上の細胞では、残り2種のECM上よりも強く染色され、分化初期ECMは骨芽細胞への分化を促進することが示唆された。さらに、メカニズムを検討するために、転写因子の発現量を測定し、幹細胞ECM上では、骨芽細胞への分化自体が抑制されていた一方で、分化後期ECM上では、脂肪分化に関わる転写因子も同時に発現し、拮抗することにより、骨分化が抑制されていることが示唆された。このような骨分化模倣型マトリックスを用いることで、幹細胞が分化する際のECMの役割を生体外で直接解析でき、幹細胞の分化制御におけるECMの役割解析の進展が期待される。また、骨分化模倣型マトリックスにより、MSCの機能制御が可能になると考えられた。
All 2009 2008
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