Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
幾何学的フラストレーションを有する系では、反強磁性的に相互作用する格子点上のスピン自由度が最低温度まで長距離秩序せず揺らぎの大きな状態が形成され、エキゾチックな物性が発現すると考えられている。一方で現実の系では多くの場合、格子等の別の自由度と結合することによりある秩序状態が形成されるが、その形成される状態はやはり非自明でありその成因や構造に興味が持たれる。そこで本研究では、幾何学的フラストレーションを有する強相関電子系において形成される電荷秩序,反強磁性秩序状態を微視的に明らかにする為に、核磁気共鳴法により電荷分布、スピン密度分布の解明を行うことを目標としている。本年度は研究期間が半期であり、主に研究環境を整えることに多くの時間を費やした。良質な試料を作成する為の電気炉及び真空排気装置の整備、フーリエ変換スペクトルを得る為のNMRスペクトロメーターの2チャンネル化、極低温用のNMRプローブの作成を行った。このような研究装置の整備を通じ、本年度は、欠損スピネル化合物GaNb4S8とスピネル化合物LiRh204について核磁気共鳴法により、これらの物質について研究を行った。GaNb4S8はNb4S4クラスタがS=1/2のスピンを担う磁性体であり、30Kで相転移を起こす。クラスタがfcc構造を有するため幾何学的フラストレーションの効果が期待される。本系の転移及び基底状態の詳細については明らかでなかったが、本研究により、基底状態は非磁性の一重項状態であることが分かり、ヤーンテラー不安定性による格子の不安定性の結果起こっていることが明らかとなった。また、LiRh204は新規に発見されたスピネル化合物であるが、本系は170Kで金属絶縁体転移を示すが、基底状態が非磁性であることを明らかにし、その電荷分布に関する知見を得た。これらの成果については投稿準備中である。
All 2009
All Presentation (1 results)