Outline of Final Research Achievements |
らせん型d-f型錯体の高次集積化によるパノスコピック階層構造の構築とらせん型骨格の特徴を生かした特異な発光特性の発現を目指して、直鎖状テトラオキシム配位子と二種の金属イオン(亜鉛、ランタニド)の錯形成によりらせん型d-f錯体を合成した。テレフタルアルドキシム部位を含む配位子を用いた場合、Zn_2Ln (Ln=Sm^<3+>, Eu^<3+>, Tb^<3+>, Dy^<3+>)らせん型錯体の可視部の発光は観測されなかったが、Yb^<3+>, Nd3+の近赤外部の発光の増感に有効であることがわかった。また、二つのN2O2配位部位をエーテル鎖で連結した配位子を用いて合成したらせん型錯体の場合、Sm^<3+>の赤色発光が観測され、亜鉛錯体部からの効率的なエネルギー移動が示唆された。 また、亜鉛-希土類系のらせん型多核錯体のキラリティー制御および高次集積を目指して、キラル誘起部位として光学活性なR,R-ジフェニルエチレンジアミンを導入した配位子を新たに設計した。この配位子と亜鉛(II)・ランタン(III)との錯形成では、一重、一回巻きのらせん型錯体が生成した。このとき、左巻き:右巻きの生成比は71:29となっており、左巻きのらせんを優先的に生成させることに成功した。また、このらせん型錯体は結晶中で左巻きの4回らせん軸を形成していることが明らかとなった。このような、らせん型錯体がさらに高次のらせん構造を形成した階層構造は、有機化学的な配位構造制御に基づく新しい材料の開発と物性の発現に向けた新しい手法として重要なモチーフとなる。
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