Project/Area Number |
20929023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
医学Ⅱ(基礎医学)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
林 芳弘 Kochi University, 医学部・医学科病理学, 技術専門職員
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Project Period (FY) |
2008
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2008)
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Budget Amount *help |
¥570,000 (Direct Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2008: ¥570,000 (Direct Cost: ¥570,000)
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Keywords | ラット肝芽細胞 / 細胞遊走 / 初代培養 |
Research Abstract |
1. 目的 ラットの初期肝発生は、前腸内胚葉より突出した肝原基が基底膜を破壊し、横中隔間葉組織内に浸潤、増殖することから始まる。この過程は、ヒト癌細胞の浸潤・増殖・転移に類似したメカニズムが働くと推定される。申請者は、癌細胞の浸潤・転移に寄与するタンパクとしてfascin(actin-bundling protein)に注目し、肝発生初期の肝臓から肝芽細胞(未熟な肝細胞)を分離・培養する方法を確立し、fascinタンパクの発現と細胞外マトリックスなど他の因子との相互作用について検討した。 2. 肝芽細胞の分離法の確立 ラット胎齢13.5日胚より、実体顕微鏡下、肝臓を摘出し、メスで細切、ディスパーゼ(2.5mg/ml)に0.01%DNaseを加えた溶液内で消化処理(37℃、60分間)後、100μmのメッシュでろ過した。肝芽細胞の表面タンパクに対する抗体(抗E-cadherin抗体:200倍に希釈)を反応させた後、洗浄し、Microbeads標識anti-mouse抗体を作用させ、磁気細胞分離システム(MACS)を用いて、肝芽細胞を単離した。 3. 培養肝芽細胞のfascinの発現 生体内では、胎齢16.5日の肝芽細胞はfascinを発現していない。この観察結果より、胎齢13.5日肝より分離した肝芽細胞では、培養48時間後には、fascinの発現が消失すると予想した。分離後24時間後では、fascinの強い発現が認められたが、48時間後ではその発現が減退し、予想通りの結果が得られた。しかし、fibronectin-coat dish培養48時間後の観察では、fascinの発現低下はほとんど認められなかった。 4. 微細構造観察 形態的にfibronectin-coatとnon-coatの培養細胞を電顕観察すると、fibronectin-coat培養肝芽細胞は、細胞遊走に関与する細胞突起やアクチンファイバーが多く見られる傾向にあった。 5. まとめ 今回の研究により、肝芽細胞のfascin発現およびその発現変化にfibronectinが関与していることが明らかになった。このことより、fibronectinをligandとするintegrinやその下流に位置する細胞内情報伝達系および細胞内骨格系を制御することにより、癌細胞遊走・転移を抑制できることが示唆された。また、肝発生初期の肝芽細胞を用いた研究は、癌細胞の細胞遊走・転移機能を明らかにするための有用なツールとなることが証明された。
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