Project/Area Number |
20H00029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 3:History, archaeology, museology, and related fields
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 和裕 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (70274404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 茂 名古屋外国語大学, 世界共生学部, 教授 (10162950)
弘末 雅士 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (40208872)
井野瀬 久美惠 甲南大学, 文学部, 教授 (70203271)
貴堂 嘉之 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70262095)
高橋 秀樹 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (80236306)
疇谷 憲洋 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 教授 (80310944)
鈴木 英明 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 准教授 (80626317)
松井 洋子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (00181686)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥43,160,000 (Direct Cost: ¥33,200,000、Indirect Cost: ¥9,960,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,790,000 (Direct Cost: ¥8,300,000、Indirect Cost: ¥2,490,000)
Fiscal Year 2022: ¥10,790,000 (Direct Cost: ¥8,300,000、Indirect Cost: ¥2,490,000)
Fiscal Year 2021: ¥11,050,000 (Direct Cost: ¥8,500,000、Indirect Cost: ¥2,550,000)
Fiscal Year 2020: ¥10,530,000 (Direct Cost: ¥8,100,000、Indirect Cost: ¥2,430,000)
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Keywords | 奴隷研究 / 比較史 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、地中海型奴隷制度の概念を導入することによって「大西洋奴隷貿易による黒人奴隷制度」を、古代地中海世界から中世イスラーム世界を経由し、近世・近代の世界的規模の奴隷制にいたる流れに位置づけるものである。従来「奴隷制度」として扱われてきた固定的なシステムとしての「支配と抑圧」の制度を、各時代・地域における多様な隷属形態との連続性の中で捉え直し、その歴史的意義を問い直す。分析に際して労働形態、ジェンダーと再生産、奴隷解放と隷属の連続性の視座を設定し、また現代における「奴隷制の記憶化」を射程におく。これによって世界史における普遍的な「隷属」のあり方に対する歴史学的考察を進める
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、地中海型奴隷制度という概念を設定することによって、従来「奴隷制度」として扱われてきた固定的な「支配と抑圧」の制度を、各時代・地域における多様な隷属形態との連続性の中で捉え直し、その歴史的意義を問い直すものである。 本年度(令和4年度)においては、奴隷・隷属者の「ジェンダーと再生産」に視座をおいて、その類型化と地域・時代における比較、またそれぞれの環境下における変容などを検討するとともに、前年度の視座である「労働形態」との比較を行うことによって、総合的な「隷属的労働とジェンダー」の検討を行った。これによって地中海型奴隷制度論の検証をさらに推進した。 前年度のブラジル人研究者フラヴィオ・ゴメス教授との2回にわたる国際ワークショップの内容を受けて、本年度は3回の国内研究会を実施した。特に11月と12月に行った研究会は、メンバー全員の報告による中間総括的研究会であり、前記総合的な「隷属的労働とジェンダー」の検討を進めるものとなった。これらの研究会はすべてオンラインで実施された。また海外調査として、令和3年度繰越金によるブラジル共同調査を受け、令和4年度繰越金より令和5年8月にカリブ海域調査を行った。この調査によって、カリブ海域におけるサトウキビプランテーション跡10数カ所を訪問し、その立地・水源・労働形態に関する知見を深め、また現地学芸員との研究交流を行った。 これらの成果は国内外の学術雑誌その他に論文および著作として発表した。 本年度の研究は新型コロナウィルス感染の急速な拡大に伴って、繰越をおこなうことにより、令和4年度から令和5年度にかけて実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究も、引き続き新型コロナウィルス感染拡大によって大きな制約を受け、当初対面開催を予定していた7月の研究会もオンラインに変更せざるを得なかった。しかし引き続きオンライン研究会を実施。また年度末に向けて海外調査も可能となり、個別の海外調査を実施した。一方で、本年度予算で計画していたカリブ海域調査は、現地の情勢悪化により予算を繰越申請し、令和5年8月に調査地をハイチから、同じ島内に存在するドミニカ共和国に変更して実施することとなった。しかし、結果的に調査活動は十分に目的を達し、当初予定していた成果を十分に達成することができた。 令和4年度は当初設定した比較研究の3つの視座(1)労働形態、(2)ジェンダーと再生産、(3)奴隷解放と隷属の連続性の比較研究のうち、「ジェンダーと再生産」の視座からの検討・分析・議論を展開した。 この目的のために、国内における研究会を7月、11月、12月に実施し、上記のようにメンバー全員による中間総括的研究報告のほか、研究分担者弘末雅士の著作『海の東南アジア史:港市・女性・外来者』(筑摩書房、2022年)に対する合評会を行い、隷属者のジェンダーと労働に関するローカルな対応について、議論を深めた。 さらに令和5年8月にカリブ海域における共同調査を実施し、ドミニカ共和国およびフランス海外県グアドループにおいて、サントドミンゴ、グアドループ本島、マリーガランテ島における奴隷関連施設、奴隷関連博物館・記念館、プランテーション農場跡を集中的に訪問した。特に、グアドループ奴隷記憶博物館においては、カリブ海域の奴隷に関する包括的な情報を得るとともに、前年度訪問したブラジルにおける奴隷文化との共通点や差異を確認した。またプランテーション農場跡では、水源と立地の関係性と、それと関わる奴隷文化のあり方を調査検討した。 これらによって本研究は順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は3つの視座のうち、第3の「奴隷解放と隷属の連続性」の検討を開始する。それに当たっては、第1の視座である「労働形態」第2の視点である「ジェンダーと再生産」を総合した11月12月の研究会における議論を踏まえて、個々の時代・地域の研究を展開し、さらなる総合研究へつなげる。また研究協力を行っているブラジルにおける「奴隷解放と隷属の連続性」に関する知見を深めるため、国際ワークショップとともに、バイーアとリオデジャネイロ近郊における現地調査を実施する。これによって、奴隷解放と逃亡奴隷の関係性や、解放後の社会・文化の変容と連続性に関する検証を行うことが期待される、さらに奴隷とジェンダーまた解放後の文化変容に係わる研究視点として、令和5年7月にバイーア連邦大学Lui s Ni col au Pares教授による、ブラジルの黒人奴隷の子孫による宗教儀礼カンドンブレにおける女性の役割に関する報告を実施、バイーアにおける現地調査と連動させる。 令和5年12月には、サンパウロ大学Maria Helena Machad教授を日本に招聘し、ブラジルの奴隷女性のあり方や奴隷解放、奴隷所有に対する欧米の視点などについて報告・研究会を実施する。 令和6年8月には、サンパウロにおいて、上記、Machad教授およびリオデジャネイロ連邦大学教授Flavio Gomez教授の協力の下に国際ワークショップを開催する。本研究はブラジルにおける奴隷研究との共同協力を推進することを重視しており、。本プロジェクトメンバー(研究代表者・研究分担者)の研究分野の多様性が、国際的な奴隷研究の展開に大きなインパクトを与えることが予想される。 各メンバーは担当する地域・社会の個別事例の研究を深化させつつ、共同研究を行う。その成果は学術雑誌における論文、単著、また学会報告として国内外に発信する。
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