Project/Area Number |
20H00050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 4:Geography, cultural anthropology, folklore, and related fields
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
關 雄二 国立民族学博物館, その他部局等, 名誉教授 (50163093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
サウセド ダニエル 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (10727671)
坂井 正人 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (50292397)
瀧上 舞 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (50720942)
鵜澤 和宏 東亜大学, 人間科学部, 教授 (60341252)
井口 欣也 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (90283027)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥44,980,000 (Direct Cost: ¥34,600,000、Indirect Cost: ¥10,380,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
Fiscal Year 2022: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
Fiscal Year 2021: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
Fiscal Year 2020: ¥12,220,000 (Direct Cost: ¥9,400,000、Indirect Cost: ¥2,820,000)
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Keywords | 考古学 / 文化人類学 / 文明 / 権力 / 社会的記憶 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、南米の太平洋岸に成立したアンデス文明を対象に、60年以上続く日本のアンデス文明研究の成果を踏襲しながらも、権力と社会的記憶という分析視点と分野横断的な手法を南米ペルー共和国における考古学調査に導入することで、古代文化の交代期における権力の生成を追究し、アンデス文明史の再構築に取り組む。インカ帝国をさかのぼること数千年におよぶアンデス文明研究では、従来、文化の交代期、滅亡に関わる議論が少なく、本研究では、過去の社会に対する歴史や記憶の統御という斬新な切り口を導入することで、新たな文化変遷の様相を捉え、アンデス文明論の再構築を図る。
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Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍で中断していた日本人研究者による現地調査を3年ぶりに再開し、7月下旬より一ヶ月半ほどペルー北高地カハマルカ州チョタ郡ケロコト郡に位置するラ・カピーヤ遺跡で発掘調査を実施した。2021年度に発見した防御用の溝構造が等高線に沿って延びることを確認し、インカ直前(後1300~1500年頃)の社会のコンフリクト状況が明らかになった。この調査の過程で、形成期中期(前1000年~前700年)にさかのぼる基壇と部屋が検出され、層位的にはそれより古い墓も発見された。 この墓は、深さ約1.5mで、上部には大量の礫が詰め込まれ、その下には1トン以上の大石が置かれていた。大石の下からは、エクアドル産の巻き貝であるストロンブスが20点見つかり、その上に成人男性の遺体が安置されていた。ストロンブス貝および遺体には、貝や青緑色の石製の装飾品が捧げられていた。これまでに形成期中期にさかのぼる貴人墓は発見されておらず、権力者の誕生時期が大幅にさかのぼる可能性が高い。この発見は、国内外で報道されたほか、英国の雑誌World Archaeology Magazine誌において8ページにおよぶ異例の特集記事が掲載され、世界的にも注目された。さらにエクアドルで開催された国際会議の基調講演でもこの発見を紹介した。 このほか、Senri Ethnological Studies 112に、これまでの研究成果をとりまとめることができた。そこでは、形成期における主要な文化の一つであるチャビンを扱う米国チームと、ペルー北高地の遺跡を扱ってきた日本チームのデータを比較することで、従来のようにチャビン文化がアンデス全土を席巻したというよりも、複数の拠点文化が存在し、競合関係にあったという新たなモデルを提示することできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
考古学的調査においては、コロナ禍により遅れていた現地調査を開始することができた点は大きい。プロジェクト開始時に想定していた調査データの収集や分析に多少の遅れが生じていることは事実であるが、今後の調査でなんとか挽回していきたい。また昨年の調査の際に、サンプル抽出作業を行い、人骨、獣骨などの科学分析もようやく軌道に乗りつつある。今後は、日本に保管されているサンプルの再分析なども視野に入れ研究を充実させたい。 一方で、昨年の調査で重要な墓を発見することができた点も大きな収穫であった。本プロジェクト自体は、形成期以降(前1年以降)の社会を対象としているが、形成期中期(前1200~前700年)という、これまでの調査では得られなかった埋葬の情報は、社会的差異が明確になる形成期後期(前700~前400年)の社会が過去をどのように認識していたかを分析する際に、重要な視点を提供することは疑いようがない。これは、研究対象の拡大にもつながるが、アンデス文明史の研究自体をみたときには、むしろ喜ぶべき事態といえる。 今後は、新たな研究活動によってプロジェクトの充実をはかるとともに、これらの成果を国内外の学界で積極的に発信し、研究の遅れを補っていくこと予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、コロナ禍で中断してきた現地調査を含め、遅れを急速に取り戻しつつある。今後は、このスピード感を持って、現地調査や出土遺物の分析を進めていきたい。しかしながら、昨年12月のカスティーヨ大統領の罷免以降、国内は暴力を伴う反政府デモが横行し、日本外務省も渡航自粛勧告を発出するなど、社会的不安が解消されていない。今後は、こうした政治状況を睨みながら、現地調査を慎重に遂行する予定である。 とくに、昨年発見された墓については、国際学界における注目度が高いため、詳細な分析を行う必要があり、また墓の周辺を徹底的に発掘調査していく新たな課題も生まれている。さらに、昨年予定していたエル・ミラドール遺跡の調査も、土地所有者との交渉を進めながら、現地調査を企画していきたい。 加えて出土遺物の分析に関しては、昨年に輸出許可を得て日本に持ち帰ったサンプルの同位体分析を進め、成果を発表していきたい。こうしたデータを統合した上で、外国人研究者による評価を含む国際シンポジウムを開催すべく、その準備にとりかかる予定である。
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