Project/Area Number |
20H00156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 15:Particle-, nuclear-, astro-physics, and related fields
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野中 千穂 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (10432238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 隆博 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (60335700)
高橋 博之 駒澤大学, 総合教育研究部, 准教授 (80613405)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥46,020,000 (Direct Cost: ¥35,400,000、Indirect Cost: ¥10,620,000)
Fiscal Year 2024: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2020: ¥24,570,000 (Direct Cost: ¥18,900,000、Indirect Cost: ¥5,670,000)
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Keywords | クォーク・グルーオン プラズマ / ハドロン物理学 / 高エネルギー原子核衝突実験 / QCD相転移 / クォーク グルーオン プラズマ / 高エネルギー重イオン衝突実験 |
Outline of Research at the Start |
素粒子、原子核物理の重要な課題である、クォーク・グルーオンプラズマ (QGP) 相とハドロン相 の相転移、QCD 相転移現象・量子色力学 (QCD) 相図の解明に取り組む。高精度実験、現象論的模型の成熟、計算機の向上の条件が整った今、高エネルギー重イオン衝突実験 の定量的な解析という王道というべき手段で QCD 相図、相転移現象の解明、熱力学性質を明らかに する。同時に、これまでの高エネルギー原子核衝突実験の研究の中で新たに提示されてきた謎の理解を目指すことで、周辺物理との共通性を探り背景にある普遍的な物理を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
高エネルギー原子核衝突実験の時空発展の記述には相対論的流体模型が大きな成功を収めている。ここでは最新の相対論的流体模型を使用して、まず光子生成の解析を行った。高エネルギー原子核衝突実験では光子パズルと呼ばれる問題がある。それは横運動量分布と楕円フローと呼ばれる物理量を同時に説明できる理論計算が存在しないことである。そこで、我々は新たな光子生成機構を提案し、光子パズルの解決の一つの方法を提案した。 高エネルギー原子核衝突実験で重イオンを衝突させるため、衝突直後に強磁場が生成すると考えられている。しかし生成された磁場の時空発展の詳細はわかっていない。ここではこの問題を明らかにするべく、相対論的抵抗性磁場流体の数値計算コードを高エネルギー衝突実験を記述するのに便利なミルン座標系ではじめて構築した。解析解との比較といったテスト計算を行いコードの検証を行った。その後、米国ブルックヘブン国立研究所にあるRelativistic Heavy Ion Collider の実験の解析に適用した。特に対称系である金ー金衝突と非対称系である金ー銅衝突の2つに注目をし、比較をすることで電磁場の影響がどのように現れるのかについて議論を行った。その結果電荷依存のフローに電磁場依存性が現れ、実験結果との比較から電気伝導率を導き出すことに成功した。特に非対称系である金ー銅衝突においてその影響を顕著に見出せることがわかった。さらに衝突後の流体化、熱平衡化をあきらかにするべくパートンカスケード模型を構築した。一方、流体ゆらぎを取り入れた解析も行った。多粒子フロー相関の解析を行ったところ、粘性への応答は小さいのに、流体ゆらぎへの応答を示す多粒子フロー相関のチャンネルの存在を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相対論的粘性流体模型の応用に関連して、光子生成についての論文を完成させこの研究については一区切りをつけることができた。米国、ブルックヘブン国立研究所のRHICと、LHCの両衝突エネルギーについて解析を行い、高エネルギー重イオン衝突実験の光子生成の新たな生成機構の提案に成功した。電磁プローブの研究の発展としてレプトン対の解析へと進行している。衝突直後からの流体化、熱平衡化の過程を明らかにするべくパートンカスケード模型も構築した。ここにこれまでは注目されていなかったクォークの寄与を加えた。このパートンカスケードの模型の構築と検証を終了させることができた。さらに流体ゆらぎと多粒子フロー相関についての解析を行った。それにより粘性の値に敏感ではない多粒子フロー相関が流体揺らぎには敏感であることを見出した。これによって実験の解析によって粘性の値を導き出すには、流体揺らぎの寄与が大事であることを初めて示した。今年度の最も大きな成果は相対論的抵抗性電磁流体模型を完成させたことである。高エネルギー重イオン衝突実験では、電荷を持った重イオンを衝突させるため、衝突直後に宇宙一とも言える大きな磁場が生成されることが指摘されていたが、その磁場の時間発展についての定量的な研究はまだなされていない。そのため我々は抵抗性相対論的磁場流体模型の構築に取り組んだ。特に高エネルギーー重イオン衝突実験を取り扱うのに便利なミルン座標系でのコードは世界初のものである。この完成したコードを用い電荷依存のフローの解析を行なった。その結果金ー金衝突においても有限の電気伝導率をもつ可能性があること、非対称衝突系の重要さを指摘した。 以上のようにこれまでの流体模型の実験結果解析応用だけでなく、パートンカスケードによる流体化、流体揺らぎ抵抗性相対論的流体模型の完成とかなり充実した成果を出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
完成した相対論的抵抗性電磁流体について様々な発展を予定している。一つは状態方程式をより現実的なものに置き換えることである。昨年度は理想気体の状態方程式を用いたが、それを格子QCDで得られた状態方程式に置き換え、QGP相とハドロン相の相転移を含める。次にカイラル電磁流体へと拡張する。我々のアルゴリズムではごく簡単な拡張でカイラル電磁流体を実現させることができる。カイラル電磁流体により、Relativistic Heavy Ion Collider (RHIC)で行われている同位体同士を衝突させる実験系での詳細な解析を行うことが可能になる。さらに中性子星内部構造など宇宙物理学への応用も期待できる。次に、密度方向への拡張を行う。現在、RHICではQCD臨界点を発見するべく、Beam Energy Scan (BES) 実験が行われている。衝突エネルギーが大きくなると流体模型に密度の寄与を入れる必要がある。有限密度を扱えることで、ALICE, BESといった広い衝突エネルギーで温度、密度、磁場といった3次元での量子色力学相図の解明が世界で始めて可能になる。さらに完成した流体模型を用いて光子やレプトン対といった電磁プローブの解析を行い、磁場の影響をさぐる。またBES実験ではQCD臨界点の探索がなされている。より精密な現象論的模型を用いて、QCD臨界点の痕跡を実験結果が見出せる観測量や手段を提案する。完成したパートンカスケードを用い、重イオン衝突実験における流体化、熱平衡化のメカニズム解明する。さらにパートンカスケード模型を用いて、今は現象論的なパラメトライズで決められている流体模型の初期条件に対し、より現実的な初期条件を作成する。
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