Project/Area Number |
20H01335
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 03040:History of Europe and America-related
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
中野 博文 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (10253030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥後本 芳男 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (00247793)
小原 豊志 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10243619)
山本 貴裕 広島経済大学, 教養教育部, 教授 (10279052)
岩野 祐介 関西学院大学, 神学部, 教授 (20509921)
横山 良 神戸大学, 国際文化学研究科, 名誉教授 (30127873)
長田 浩彰 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40228028)
遠藤 泰生 関西国際大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (50194048)
田中 きく代 関西学院大学, 特定プロジェクト研究センター, 客員研究員 (80207084)
朝立 康太郎 西南学院大学, 国際文化学部, 准教授 (80513762)
岩崎 佳孝 甲南女子大学, 国際学部, 教授 (90340835)
金井 光太朗 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (40143523)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,680,000 (Direct Cost: ¥13,600,000、Indirect Cost: ¥4,080,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2020: ¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
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Keywords | ポピュリズム / 暴力 / 反知性主義 / 先住民 / 奴隷制 / 共和政 / 自由主義 / 言論 / 移民 / デモクラシー / ボーダーランズ / 帝国 / 共和主義 / 民主政 / 人種 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、ポピュリズムの起源をアメリカ合衆国の建設と発展の歴史のなかで考察するものである。従来、ポピュリズムは国民の自由を脅かす社会的病理現象とされてきたが、本研究ではポピュリズムを社会の近代化に対する民衆の応答と捉え直し、その起源を開拓時代の白人定住地で生じた異分子排除の衝動に求める。新しい視角から資料を読み解くことで、米国民の自由の発展を視座とした既存の国民主義的歴史観の立場では捉えきれない民衆文化の生成を究明し、差別・暴力と近代民主主義との本源的関係を問い直すことを目指した研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究第三年目の予算を使用して実施した研究活動で重点を置いたのは、コロナ禍によって、これまで実施延期が続いた海外調査である。アメリカに固有の伝統としてポピュリズムを捉える場合、この国に暮らす人々特有のキリスト教理念、そして主権者意識に注目すべきことは、前年までの共同研究で明らかになっていた。これらを史料に基づいて考究するため、共同研究者二名を米国に派遣することが、ようやくかなった。ペンシルヴァニア州の調査では、アンテベラム期における教会組織の紛争が政党対立に直結していたこと、ロードアイランド州の調査では、人民主権の内実をめぐって勃発した州内の暴力党争が連邦政府を巻き込む憲法闘争になったことについて、史料を集めた。 また、ポピュリズムをアメリカ社会の伝統とするとき、際立った特徴となるのが、たやすく暴力に訴える傾向である。この点、その史的性格を詳らかにするため、ファシズムとの比較に注力した。その視座としたのは、第一に、ポピュリズムの民衆動員の手法がファシストの暴力によるプロパガンダと共通しているか、第二に、ポピュリズムの人民意識がファシズムの国民主義とどこまで通底しているかである。 こうした史料収集と比較史の成果が実り、科研の最終年度も翌年に迫ったため、中間総括を行い、日本アメリカ史学会で年次大会でシンポジウムを開催した。そこでは、ナショナリズムの考察を通じて、アメリカ・ポピュリズムの史的特徴を論じてこられた古矢旬氏から、ポピュリズムをアメリカの政治的伝統とする場合の課題が指摘された。ポピュリズムの定義と把握する視角に不十分な点があるため、キリスト教理念から生じた党争にしても、反乱の背後にあった人民理念の相違にしても、十分に史的文脈を示し得ていないことである。そこで、この定義と視角の問題を克服することを、来年度の課題とすることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本科研の活動で中核になっているのは海外史料調査である。今年度は、科研に採択された時から苛まれてきたコロナ禍が解消されたものの、当初予定していた調査を実施することはできず、これまでの遅れを十分に取り戻すことができなかった。インフレと円安で海外調査費が高騰し、当初計画を予算内で実施できなくなったためである。この結果、目指していた研究成果を得ることがもっとも期待される史料を選択し、またその考察も共同研究者が連携して効率的におこなうこととした。また、最終年度に予定している成果発表の国際シンポジウムも、招聘する研究者を一人に絞り、その代わりに、シンポジウムで世界に発信するポピュリズム理解を尖鋭なものにするため、十分な準備をおこなうこととした。この点、国内での移動が自由になったため、研究分担者、研究協力者による対面での研究会が支障なく実施できるようになったことから、これまでの研究の中間総括では思った以上の成果をあげることができた。日本アメリカ史学会年次大会のシンポジウムでは建設的な批判を得ることができ、その振り返りの研究会でも、最終成果に向けての準備を整わせることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度にこれまでの成果を総括したことで、海外調査を十分に行えなかったとはいえ、歴史理解の視座としてポピュリズムを用いることのメリットと、その場合の課題が鮮明となった。科研の最終年度となる来年度は、この課題に対する本科研メンバーの回答を準備し、現在のアメリカ・ポピュリズム史研究の第一人者であるマイケル・ケイズン教授の助言を得ながら、最終成果発表の場となるシンポジウムの準備をする。 その際、当初計画ではケイズン教授に加えてアメリカ合衆国以外からも研究者を招聘することにしていたが、予算の不足からケイズン教授のみの招聘となる見込みである。このため、最終成果の出版物には、アメリカ以外の海外研究者の視角を取り入れられるように準備する。 これまで、ポピュリズム理解をグローバルなかたちで深めていく試みとして、研究分担者の一人がナチス・ドイツを専門とする研究者であることから、ファシズムとの比較史に注力してきたが、可能な限り、ヨーロッパ以外の非西洋地域の研究者も巻き込んで、グローバル史の構築に向けた態勢をつくる。
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