Project/Area Number |
20H01849
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
太田 幸則 千葉大学, 大学院理学研究院, 名誉教授 (70168954)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 竜也 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (30784433)
鈴木 真粧子 (酒巻) 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (90598880)
杉本 高大 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (70756072)
佐藤 正寛 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (90425570)
柚木 清司 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (70532141)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥17,550,000 (Direct Cost: ¥13,500,000、Indirect Cost: ¥4,050,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2020: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
|
Keywords | 励起子絶縁体 / 励起子凝縮 / 非平衡ダイナミクス / 強相関電子系 / 遷移金属化合物 / プリフォームドペア / 物性理論 / 強相関系 / プリフォームド・ペア |
Outline of Research at the Start |
励起子絶縁体の有力な候補物質の発見を契機として、相関電子系における励起子凝縮の物理が近年大きく進展してきた。本研究代表者グループは、この分野の理論研究で世界を先導している。最近では、強結合励起子系のプリフォームド・ペア状態の特異性を示唆する実験や、超高速分光実験による励起子系の非平衡ダイナミクスの観測を通して、更なる展開の方向性が見えてきた。そこで本研究では、①強結合励起子系のプリフォームド・ペア状態の解明、②非平衡状態での励起子相ダイナミクスの解明、③第一原理計算に基づく有効電子模型の導出を行い、超伝導と並ぶフェルミオン対凝縮系の秩序と揺らぎおよび非平衡ダイナミクスの学理を深化させる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、本申請代表者グループの励起子凝縮に関するこれまでの理論研究を背景に次の3点を明らかにすることである。すなわち、① 熱的純粋量子状態に基づく変分クラスター近似を用いた強結合励起子凝縮機構の解明 ② 時間発展ランチョス法・時間依存密度行列繰込み群法による励起子相の非平衡ダイナミクスの解明 ③第一原理計算とその解析に基づく低エネルギー有効電子模型の導出。これらにより、超伝導と並ぶフェルミオン対凝縮系としての励起子凝縮の物理の学理を深化させる。この目的を達成するため、研究分担者と協力者を3チームに分け、計画の4年間で強結合励起子絶縁体の特異性を明らかにし、有限温度量子多体系における秩序と揺らぎという歴史的大問題にひとつの解答を与え、さらにはフェルミオン対凝縮系の非平衡ダイナミクスという未踏の問題に糸口を見出す。 令和4年度は、令和2年度から始まった新型コロナウィルス感染症拡大の影響も徐々に薄れ、半導体関連の電子部品納入の遅れによる数値計算用のワークステーションの購入等で依然として若干の問題があったものの、概ね従来の研究活動を維持できるまでに原状回復がなされたといえる。その結果、今年度は特に、強相関2次元電子模型に密度行列繰り込み群(DMRG)の手法を適用するという点に関し、スパイラル境界条件を利用することで著しい進展があった。励起子絶縁体の代表的候補物質であるTa2NiSe5は、電子物性的に1次元性が強いとはいうものの基本的には2次元電子系であり、その電子状態を解明するには2次元系に適用可能な強力な数値計算手法が必要であるが、それへのひとつの糸口が見つかったといえる。この新しい手法を用いて、スピン量子数の大きな2次元ハイゼンベルグ模型のスタガード磁化や、ハニカム格子上で定義されたキタエフ・ハイゼンベルグ模型の電子相図に関し、新たな知見を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、研究の開始(令和2年度)から数えて3年目であり、各研究チームの状況も研究開始時と比べて大きく変化してきているので、研究組織の再編成、すなわち研究分担者の追加や各チームのメンバーの交代を含め、研究チームの再編成を実行に移した。その結果、より効果的な研究推進の体制を構築できたと考えている。 研究代表者チームは現実の物質を記述する低エネルギー有効模型の導出を中心に研究を展開してきた。物質に即した模型の構築により、実験結果の定量的理論解析を通して、本研究の核心となる学術的問いに答える努力を継続する。また、密度行列繰り込み群(DMRG)の手法を2次元電子模型に効率的に適用するスパイラル境界条件の手法の開発に成功した。今後はこれを励起子絶縁体候補物質に対する強相関電子模型に適用し、その電子状態の解明に迫りたい。またこれまでと同様、本研究代表者として全チームを統括し、研究全体を取り纏める努力を継続する。さらに、研究成果の他分野への波及効果を総合的に評価検討し将来の方向性を明確化することを、今後も継続的に実行する。 研究分担者チームは、相関電子系の非平衡ダイナミクスを中心に研究を展開してきたが、今後もこれを継続する。すなわち、光励起による強結合励起子系の非平衡ダイナミクスや、種々の光誘起相転移の可能性を検討していく。また、モット絶縁体におけるレーザー光照射による高次高調波発生に対する励起子形成の効果の数値的研究をさらに推進し、強相関電子系の光励起による非平衡ダイナミクスにおける励起子形成の効果の重要性を引き続き明らかにしていきたい。さらに、イータ・ペアリング状態の実現可能性の追求や、その励起子凝縮系への応用可能性を検討していきたい。研究分担者は、これまでと同様、各研究チームの代表として関係する院生等の研究指導を行い、研究協力者を統括する。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は本研究計画4年間の最後の年度なので、これまでの研究をより高度化すると同時に、これまでの研究成果全体を取りまとめ、今後の研究への方向性を明確化することになる。もちろん、研究目的の達成のため励起子絶縁体に関係する新概念の形成に繋がる多彩な内容を各自究明し、多人数で協力して励起子凝縮の学理の深化を目指すという方針に、今年度も特に変更はない。当該の量子多体問題に対し、非平衡グリーン関数による摂動論的解析手法に加え、強相関電子系に対する非摂動論的な量子クラスター法を中心とする多彩な数値計算手法を開発・応用するという点や、現実の物質に対する定量的研究を行うため、理論模型の改良を行い、実験事実との定量的比較を視野に入れた研究を発展させるという点についても、引き続き継続していきたい。なかでも今年度は、強相関2次元電子模型に密度行列繰り込み群(DMRG)の手法を適用するという点に関し、スパイラル境界条件を利用する方法により著しい進展があったので、この手法を強相関励起子模型の2次元系に適用し、励起子凝縮機構の更なる解明に取り組みたい。 しかしながら、励起子絶縁体のプリフォームドペア状態の研究、すなわち相転移温度以上での励起子形成の効果の研究は、熱的純粋量子状態に基づく変分クラスター近似の計算手法を用いた有限温度での計算手法の適用が予想以上に難しく、依然として困難な状況にある。そこで、プリフォームドペア状態の解明に関しては少々別の観点からの研究、すなわち500ケルビン程度までの高温における電子状態をむしろ実験的に明らかにする方向での研究を模索する。すなわち、顕微ラマン分光法によるTa2NiSe5の高温におけるフォノン構造の理論的解明に取り組むことで、新たな知見が得られるのではないかと考えている。このため、令和5年度には新たな研究分担者を加え研究を展開したい。
|