Project/Area Number |
20H01902
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | The University of Tokyo (2023) Kobe University (2020-2022) |
Principal Investigator |
野海 俊文 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30709308)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早田 次郎 神戸大学, 理学研究科, 教授 (00222076)
泉 圭介 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 講師 (90554501)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,940,000 (Direct Cost: ¥13,800,000、Indirect Cost: ¥4,140,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2020: ¥7,670,000 (Direct Cost: ¥5,900,000、Indirect Cost: ¥1,770,000)
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Keywords | 弱い重力予想 / スワンプランド / 散乱行列理論 / 時空の熱力学 / 宇宙論 / 弦理論 / 標準模型を超えた物理 / 素粒子論 / ランドスケープとスワンプランド / アクシオン / ブラックホールエントロピー / 弦理論のランドスケープ / 暗黒物質 / 散乱振幅 / ブラックホール / インフレーション |
Outline of Research at the Start |
量子重力理論の構築は現代物理学の最重要課題の1つであるが、その実験的検証は重要かつ挑戦的な問題である。特に、近年の研究では「量子重力理論に基づく素粒子論・宇宙論模型が満たすべき性質は何か?」という問いを投げかけることでこの難問に挑もうという機運が高まっている。 そのような中で提案された「弱い重力予想」は「すべての相互作用の中で重力が一番弱い」ことを主張し、理論模型のパラメータに様々な上限や下限を与える。本研究では、弱い重力予想の証明に向けた理論検証を行い、またこれと並行して素粒子論・宇宙論への応用を行う。これにより弱い重力予想を鍵とした量子重力理論への現象論的アプローチを開拓する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、量子重力と無矛盾な素粒子論・宇宙論模型の判別条件「スワンプランド条件」の1つとして期待されている「弱い重力予想」の理論検証および一般化を行い、その現象論的帰結を明らかにすることである。これにより、量子重力理論への現象論的アプローチを開拓する。 前年度の成果を受け、2021年度は野海が中心となり、「重力理論における散乱行列理論」のスワンプランド研究への応用を進めた。散乱振幅のユニタリ性や因果律を用いると「粒子の質量や相互作用に対する様々な不等式」が導出できることが知られている。この考え方を重力理論に応用し、素粒子標準模型における散乱振幅を重力相互作用まで考慮して解析することで、力の統一を示唆する結果が得られた。その過程では、ゲージ相互作用だけでなく、スカラー粒子が媒介する湯川相互作用に対しても弱い重力予想と類似の条件が得られるなど、手法の汎用性を予感させるものがあった。また、同様の手法を用いてスカラー場のポテンシャルが満たすべき不等式を導出した。今後は素粒子標準模型を超えた具体的な素粒子論・宇宙論模型に手法を応用していきたい。また、重力理論における散乱行列理論の定式化自体にも解決すべき理論的問題が残っており、その点を掘り下げるのも今後の課題である。 早田は、弦理論に動機づけられたアクシオン暗黒物質の研究を進めた。特に、マグノンを用いたアクシオン探査の新たな手法を提案した。関連して、アクシオン暗黒物質模型における量子コヒーレンスの研究も行った。 泉は、これまでに行ってきた「面積不等式」の研究をさらに推し進めた。角運動量などのより詳細な情報を取り入れることで、より強い不等式を導出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
野海らによる素粒子標準模型における重力散乱に関する成果は、重力理論における散乱行列理論を現実の素粒子論模型に初めて応用した点が高く評価され、Physical Review Letter 誌より出版された。当該論文では、当初期待していた「湯川相互作用に対する弱い重力予想と類似の不等式」に加えて、力の統一を示唆する結果が得られたため、予想以上の成果が得られたと言える。この成果により、翌年度以降の具体的な展望が基礎研究と現象論的応用の両面でクリアになった。また、早田のアクシオン暗黒物質に関する研究と泉の面積不等式に関する研究も順調に進んでいる。以上を踏まえ、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
野海を中心に、今年度の素粒子標準模型に関する成果を踏まえ、「重力理論における散乱行列理論」を標準模型を超えた物理に応用していきたい。より具体的には、暗黒物質やアクシオン、ニュートリノなどをターゲットとして考えている。特に、アクシオンに関する研究を進めることで、早田が注力してきたアクシオン暗黒物質の研究にフィードバックを与えたい。加えて、重力理論における散乱行列理論の基礎研究として、重力の高エネルギー散乱で期待されるRegge化現象についても詳細な解析を行いたい。また、泉が進めてきた「面積不等式」に関する研究と弱い重力予想の関係についても徐々に議論をはじめている。時間はかかるかもしれないが、幾何学に基づく一般相対性理論の研究と量子重力研究を繋ぐ新しい方向性が提示できると期待しており、少しずつでも研究を進めていきたい。
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