Project/Area Number |
20H01941
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 16010:Astronomy-related
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松元 亮治 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (00209660)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 洋介 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (20397475)
山田 真也 立教大学, 理学部, 准教授 (40612073)
町田 真美 国立天文台, 科学研究部, 准教授 (50455200)
野田 博文 大阪大学, 理学研究科, 助教 (50725900)
高橋 博之 駒澤大学, 総合教育研究部, 講師 (80613405)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2020: ¥7,020,000 (Direct Cost: ¥5,400,000、Indirect Cost: ¥1,620,000)
|
Keywords | 活動銀河中心核 / ブラックホール / 降着円盤 / X線観測 / 輻射磁気流体計算 |
Outline of Research at the Start |
活動銀河中心核のうち、広輝線が観測される1型と観測されない2型の間の状態遷移が発生するChanging Look 活動銀河で観測される軟X線放射領域の出現・消失機構と激しい時間変動の起源を、巨大ブラックホール降着流の大局的な3次元輻射磁気流体シミュレーションによって解明する。「富岳」等の高速計算機を用いた計算により、降着率増加に伴って高温降着流が冷えて低温領域と高温領域が共存する状態の時間発展を追跡する。この計算結果から求めた輻射スペクトル等を2021年度打上予定のX線分光撮像衛星XRISM等による観測と比較し、時間変動を鍵として銀河中心核1-100AU領域の降着流の統一モデルを確立する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
国立天文台の計算機XC50に実装した1次モーメント法に基づく高次精度輻射磁気流体コード CANS+Rにコンプトン冷却の効果を組み込んで、降着率がエディントン降着率の10%程度まで上昇した場合の巨大ブラックホール降着流の大局的3次元輻射磁気流体シミュレーシを実施した。その結果、降着率増加に伴ってブラックホール近傍の移流優勢で光学的に薄く、高温の硬X線放射領域の外側にトムソン散乱に対して光学的に厚く、コンプトン冷却された領域が形成されること、この領域の温度が0.1-1keVになり軟X線強度が増加することが示された。この計算により、活動銀河中心核(AGN)のうち、広輝線が観測される1型と観測されない2型の間の状態遷移が発生する Changing Look AGNの増光時に観測される軟X線放射領域の形成機構を明らかにすることができた。さらに降着率が高くなると円盤が輻射圧優勢になって準周期振動が励起されることが示され、2021年11月に開催された IAUシンポジウムで発表した。 ブラックホールの回転の効果を調べるため、一般相対論的輻射磁気流体シミュレーションを実施し、ブラックホールの回転速度が上がるにつれて、噴出するジェットの成分が輻射エネルギー優勢から磁気エネルギー優勢になることを示した。また、電子温度とイオン温度の違いを考慮した一般相対論的2温度磁気流体コードを構築した。 将来の精密X線分光に向けて、X線分光器単体の性能試験と検出器較正を行い、要求性能を満たすことを確認できた。また、次世代の精密X線分光器の読み出し方式の実証実験も行い、分光器の性能を最大限に引き出して、原子分子の分光に関する実験的な成果をあげることにも成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次精度3次元輻射磁気流体コード CANS+R にコンプトン冷却の効果を組み込んで、活動銀河中心核ブラックホール降着流の大局的3次元輻射磁気流体シミュレーションを実施した。前年度に実施したコンプトン冷却を考慮しない計算では、降着率増加に伴って高温降着流が輻射冷却によって冷えて形成された領域の温度が Changing Look AGNの増光時に観測される軟X線放射領域の温度よりも高くなっていたが、コンプトン冷却を考慮すると、この領域の温度が 0.1-1keVに低下するという結果が得られ、軟X線放射を説明することができた。また、降着率がエディントン降着率の10%よりも高くなった場合の計算にも成功し、輻射圧が増加して準周期的な振動が励起されること、軟X線放射領域の外側に紫外線放射が卓越する領域が形成されること等が明らかになった。さらに高解像度、長時間の計算を行うため、CANS+Rコードを「富岳」計算機に実装する作業が進んでいる。 観測との連携においては、状態遷移の兆候があったセイファート銀河 NGC 6814 のX線と可視・紫外光の同時観測データの解析を進め、明るい状態における電離吸収と硬X線放射の関係から、インフローとアウトフローの状況を調べている。さらに、Changing-Look AGNである NGC 3516 において、細い Fe-Kα 輝線の有意な時間変動を検出した。現在、連続放射からの時間遅延などから、降着円盤周辺の構造への制限を議論している。 研究成果はAAPPS-DPP等の国際会議で発表された。対面でのワークショップ等は開催することができなかったが、2022年3月にオンライン形式で「ブラックホール降着流ミニ研究報告会」を開催し、進捗状況の報告と情報交換を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
降着率がエディントン降着率の1-100%の場合の巨大ブラックホール降着流の大局的3次元輻射磁気流体シミュレーションを継続する。より高解像度、長時間の計算を実施するため、高次精度輻射磁気流体コード CANS+Rを「富岳」計算機向きに最適化してシミュレーションを実施し、計算結果の解像度依存性を調べる。また、円盤の初期密度をパラメータとして降着率が異なる場合のシミュレーションを複数実施し、降着率の増減に伴う巨大ブラックホール降着流の状態遷移過程を明らかにする。 観測との比較のため、一般相対論的効果を考慮したモンテカルロ輻射輸送コード RAIKOUを用いてシミュレーション結果をポストプロセスすることによって輻射スペクトルを計算し、Changing Look AGNで観測されるスペクトル変化を説明する。また、ブラックホール降着流の状態遷移に伴うアウトフローの時間変動等について、X線観測グループとの連携を進め、2022-2023年に打ち上げが予定されているX線分光撮像衛星 XRISMによる観測に備える。
|