ネパールの世界遺産登録都市のまちなみプロトタイプ検証と景観形成・再建支援への援用
Project/Area Number |
20H02330
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 23030:Architectural planning and city planning-related
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
山本 直彦 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (50368007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 洋一 神戸大学, 工学研究科, 教授 (70252616)
中村 航 足利大学, 工学部, 講師 (50824538)
増井 正哉 京都大学, 人間・環境学研究科, 名誉教授 (40190350)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥16,250,000 (Direct Cost: ¥12,500,000、Indirect Cost: ¥3,750,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2020: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
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Keywords | ネパール / バクタプル / 世界遺産 / まちなみ保全 / 再建支援 / 常時微振動計測 / 無補強煉瓦造住宅 / 材料実験 |
Outline of Research at the Start |
世界文化遺産に初期に登録されたネパール・カトマンズ盆地の歴史都市のうち比較的よく古いまちなみを留めているバクタプルで、都市景観保全と2015年のゴルカ・ネパール地震からのまちなみの復興再建を支援するための研究である。これまでの調査から、オリジナルのまちなみがどのようであったのか目測をつけたため、今回は町全体での残存状態の調査を行う。現在、町全体が復興再建中であるため、耐震性測定や伝統材料を用いた構造補強など、技術的なテーマも含めて研究を実施する。研究プロセスには、ワークショップも含む計画である。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジアの歴史都市の形成過程解明の手法構築を目指すが、調査対象のネパールの世界遺産都市バクタプルは2015年に地震被害を受けており、その都市景観や建築構造の点から復興再建に資することも視野に入れている。2021年度の研究チームごとの研究実績は以下のようである。 意匠・景観チームは、コロナ禍で延期された2021年度分の現地調査を2022年度に実施した。具体的な内容は、コミュニティ範囲調査、まちなみプロトタイプ調査である。前者はバクタプル西部について実施した。また、後者については、今後実測を含む詳細な記録対象の選定を視野に入れ、複数の都市型住居からなるプロトタイプの範囲判定の根拠となるデータを収集した。具体的には、職業姓から見た親族の居住範囲と新年祭礼時に出現する親族住居間を結んで描かれる屋敷神の装飾の聞き取り・記録である。 建築構造チームは、調査対象地で過去に実施した無補強煉瓦造住宅建築での常時微振動計測データの再分析を行うとともに、計測対象建物の平面・立面情報を反映した簡易な解析モデルを用い、実測の加速度スペクトルに見られるピーク振動数のスクリーニング分析を行った結果、上層部の破壊や屋根に損傷がある建物をスクリーンアウトできた。また、各階煉瓦壁の面外振動と建物全体の主要な振動との関連性を明確にすることで、微動計測データによる固有振動数推定の精度向上が見られた。 材料・構法チームは、現地で採取した日干しレンガ(手成形、機械成形)および焼成レンガを対象に材料実験を行った。先ず日干しレンガの原土に対して、粒度分析および土粒子密度試験を実施した。日干しレンガは、切断し断面観察を行い成形方法による密実度合いの違いを確認した。また、外壁側に焼成レンガ、室内側に日干しレンガという壁体で構成された空間の環境特性を把握するために、小型のモックアップを作製し、温度特性の把握を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍の影響で研究初年度から2年間、現地調査を実施できなかったため予算繰越を行った。そのため以下は、2021年度分までの研究内容を2022年度までに実施を試みた進捗報告であることに留意いただきたい。2022年度には意匠・景観チームのみ、出入国条件の緩和と同時にリスクを鑑みながらも現地調査を実施した。通常であれば年度内に1ヶ月の期間で調査を実施するが、昨年度は2ヶ月間の調査期間を確保し、遅れの回復に努めた。しかし、コロナ禍前の科研費申請時から旅費・滞在費が倍額に高騰し調査人員を縮小せざるを得なかった。また、調査滞在中に2名がコロナ感染し、隔離相当の期間中は調査参加を中止せざるを得ない事態も発生した。 構造研究に関しても、現地での実測調査が実施に着手できない状況が続いているが、振動計測を行うための調査対象建物の絞り込みと、対象建物の寸法・仕様等のデータ収集を現地カウンターパートの大学研究者との協力によりオンラインで進めてきた。さらに、常時微動計測に関しても、現地カウンターパートの大学研究者とオンラインで計測計画を議論しながら、日本側スタッフの現地滞在期間の後も継続的に計測データの蓄積ができるような研究協力体制づくりの準備を進めている。 材料・構法チームもコロナ禍における所属機関の渡航制限、研究者の異動等の個人的な事情も重なり現地調査が実施できなかった。そのため前研究課題時に現地で調達した建材の分析を行い研究継続に勤めた。 以上のように、現地調査を実施した場合にも調査環境が十分でなかった。また、特に研究協力者を同行させるためには引き続き現地調査のための渡航条件が十分に整わなかった。こうした事情で、3年度目の2022年度においても、2021年度に繰り越した研究予定が十分に達成しきれておらず、研究課題の進捗状況は遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
意匠・景観チームは、今後は毎年2ヶ月間の長期現地調査を行い、進捗の遅れを取り戻すことに努める。まちなみプロトタイプ調査については、昨年度の現地調査で聞き取りを省略しても、上述の新年祭礼時の屋敷神の装飾調査を行えば、プロトタイプに対応する住居範囲の特定が可能となることを見いだした。こうした新たな調査手法を導入することで、調査時間の短縮を図り、早期に実測調査に移行する。一方で、こうした調査成果を還元するために、当初計画で研究期間後半に予定していたワークショップは、今年度までに対象地を絞るデータが揃わず中止せざるを得ないと判断している。 建築構造チームは、層増築やかさ上げなど地震前にもすでに見られた、無補強煉瓦造住宅の改修・改築がなされたケースに、さらに地震後に残存した無補強煉瓦造住宅に隣接していた住戸が、地震後に再建・建替され、隣接住戸との構造的関係が変化したケースを含めて、連続住宅群の構成ユニットの類型化を進めるとともに、現地カウンターパートの大学研究者との連携により、調査地域での実況調査が現地の研究者主体で実施可能とできる準備を進める。さらに、調査対象エリア、調査対象建物を絞り込み、常時微動計測を簡易に行えるMEMS加速度計での計測シーケンスをマニュアル化することで、データ収集のための現地カウンターパートとの協力体制を構築する。 材料・構法チームは、前年度に続き、壁体材料である日干しレンガおよび焼成レンガについて分析を行う。日干しレンガの土を水で戻し、乾燥試験体・焼成試験体を作製し、曲げ強度およびX線回析を行い、強度特性と組成の変化の確認を行う。焼成レンガについては強度試験および建物の劣化の原因と考えられる、乾湿繰り返しおよび凍結融解試験を実施予定である。また、日干しレンガの試験体については、吸放湿特性、耐摩耗性試験などを実施し、さらなる材料物性の把握を進める。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)