単層カーボンナノチューブにおける励起子エンジニアリング
Project/Area Number |
20H02558
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 28020:Nanostructural physics-related
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 雄一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (60451788)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥17,940,000 (Direct Cost: ¥13,800,000、Indirect Cost: ¥4,140,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2020: ¥8,970,000 (Direct Cost: ¥6,900,000、Indirect Cost: ¥2,070,000)
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Keywords | ナノカーボン物理 / ナノ物性 / 光物性 / ナノ光デバイス / 二次元材料 / ナノチューブ・グラフェン / ナノ構造物性 / ナノ物性制御 / ナノマイクロ物理 |
Outline of Research at the Start |
単層カーボンナノチューブは、カイラリティを同定することで構造を原子レベルで決定することが可能であり、なおかつデバイスに組み込むことも容易である。そこで、本研究では、原子レベルで構造が分かっている物質を利用することで可能となるナノ工学の新展開を視野に入れ、単層カーボンナノチューブにおける励起子エンジニアリングに取り組む。独自手法であるカイラリティ・オン・デマンド測定を駆使して、励起子の励起・緩和・解離の各過程を制御する手法を実験的に検証し、また、未解明の励起子物性現象を調査し理解することで、さらに新たな制御手法の開拓へとつなげることをねらう。
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Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、引き続き有機分子を利用した励起子ポテンシャルの形成による緩和過程の制御と微小共振器による量子電気力学効果を利用した発光緩和の制御に取り組んだほか、二次元物質や微小光共振器による励起子制御に必要となるカーボンナノチューブの清浄転写手法を開発した。 有機分子を用いた励起子ポテンシャルの形成では、ペンタセン分子の真空蒸着により架橋カーボンナノチューブの表面にナノ粒子が装飾される現象を利用した。このようなペンタセン装飾カーボンナノチューブに対し、フォトルミネッセンス分光による評価を進めたところ、装飾部分では誘電遮蔽により励起子エネルギーが低下するため、発光スペクトルには二つのピークが観測された。装飾部分の励起子エネルギーに対応する分光イメージによりペンタセン粒子の位置が推定でき、その周辺で励起スペクトルを測定したところ、装飾部位に励起子移動が起きていることが明らかとなった。 微小共振器による量子電気力学効果を利用した発光緩和の制御では、架橋カーボンナノチューブと結合可能なナノビーム空気モード共振器を作製し、多数のデバイスから発光スペクトルを収集することで光結合を示すデバイスを特定する手法を確立した。 また、カーボンナノチューブの清浄転写手法については、昇華性を持つアントラセン分子を利用した転写法を開発した。アントラセン単結晶を媒介膜として用いることで、転写後にも合成直後と同程度の明るい蛍光が得られることを示し、清浄な状態のまま転写可能であることを明らかにした。さらに、転写中に顕微分光を同時に行うことで、カイラリティが同定されたカーボンナノチューブを高精度で配置する技術を実現した。この手法の活用例として、既知のカイラリティを有するカーボンナノチューブの交差接合を実現したほか、カーボンナノチューブの励起子発光とフォトニック結晶共振器の決定論的な結合を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、単層カーボンナノチューブにおける励起子の励起・緩和・解離の各過程を制御する手法を実験的に検証し、また、未解明の励起子物性現象を調査し理解することで、さらに新たな制御手法の開拓へとつなげることを目的としている。 今年度は、ペンタセン装飾による励起子ポテンシャル形成に成功し、装飾部位に励起子移動が起きていることを明らかにした。また、昇華性を持つアントラセン分子を利用した転写法を開発し、カイラリティが同定されたカーボンナノチューブを清浄な状態のまま高精度で配置する技術を実現した。この手法を活用して作製したカーボンナノチューブの交差接合における励起子移動現象も観測できている。以上のように、励起子制御手法の実験的検証と励起子物性現象の調査はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き有機分子を利用した励起子ポテンシャルの形成による緩和過程の制御と微小共振器を利用した量子電気力学効果による発光緩和の制御に取り組むほか、二次元材料とのヘテロ構造を用いた励起手法や電界効果素子による励起子生成手法の開発にも着手する。 有機分子を利用した励起子ポテンシャルの形成では、これまで取り組んできた誘電率によるポテンシャル形成に加え、分子修飾によるポテンシャル形成に取り組む。カーボンナノチューブに分子を修飾し、欠陥準位により励起子を束縛することで、励起子-励起子消滅などの緩和過程を制御する。ミセル化ナノチューブや清浄な架橋カーボンナノチューブを利用し、フォトルミネッセンス測定や励起分光による評価を進める。 微小共振器による量子電気力学効果を利用した発光緩和の制御は、フォトニック結晶共振器とカーボンナノチューブの励起子を光結合させることで起きる発光緩和の加速の観測をねらう。時間分解測定による緩和時間の直接測定に加え、発光スペクトルの解析により共振器による発光緩和の加速を評価する。 二次元材料とのヘテロ構造を用いた励起手法の開発では、遷移金属ダイカルコゲナイドを利用した励起子移動の調査に着手する。今年度までに開発したアントラセン結晶を用いた転写手法を活用して架橋カーボンナノチューブ上に原子層材料を転写してヘテロ構造を作製する。フォトルミネッセンス分光により励起子移動の物理を調査し、カーボンナノチューブにおける励起子の選択的励起の可能性を検討する。 また、電界効果素子による励起子生成手法の開発では、シリコン・オン・インシュレーター基板を用いて分割ゲートを有するデバイスを作製し、励起子をゲート電圧のみによって生成する手法の検証実験に着手する。ゲート電圧波形を加えた際に生じる発光を検出し、時間平均の発光スペクトルの測定や時間分解測定に取り組む。
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Report
(2 results)
Research Products
(28 results)
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[Presentation] Diameter-dependent photoluminescence properties in color centers of air-suspended single-walled carbon nanotubes2020
Author(s)
D. Kozawa, X. Wu, A. Ishii, J. Fortner, K. Otsuka, R. Xiang, T. Inoue, S. Maruyama, Y. H. Wang, Y. K. Kato
Organizer
The 59th Fullerenes-Nanotubes-Graphene General Symposium,
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