Project/Area Number |
20H05632
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section A
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大竹 文雄 大阪大学, 大学院経済学研究科, 特任教授(常勤) (50176913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 勝 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (10340647)
小原 美紀 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 教授 (80304046)
平井 啓 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (70294014)
山村 英司 西南学院大学, 経済学部, 教授 (20368971)
佐々木 周作 大阪大学, 感染症総合教育研究拠点, 特任准教授(常勤) (20814586)
黒川 博文 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (90811430)
李 嬋娟 明治学院大学, 国際学部, 准教授 (40711924)
島田 貴仁 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 室長 (20356215)
齊藤 知範 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 主任研究官 (10392268)
山根 由子 科学警察研究所, 犯罪行動科学部, 研究員 (80721175)
具 芳明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30622526)
浅川 慎介 佐賀大学, 経済学部, 助教 (10962912)
加藤 大貴 一橋大学, 社会科学高等研究院, 特任助教 (40979332)
埋橋 玲子 大阪総合保育大学, 児童保育学部, 教授 (50269924)
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Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥196,820,000 (Direct Cost: ¥151,400,000、Indirect Cost: ¥45,420,000)
Fiscal Year 2024: ¥37,700,000 (Direct Cost: ¥29,000,000、Indirect Cost: ¥8,700,000)
Fiscal Year 2023: ¥38,610,000 (Direct Cost: ¥29,700,000、Indirect Cost: ¥8,910,000)
Fiscal Year 2022: ¥38,610,000 (Direct Cost: ¥29,700,000、Indirect Cost: ¥8,910,000)
Fiscal Year 2021: ¥38,610,000 (Direct Cost: ¥29,700,000、Indirect Cost: ¥8,910,000)
Fiscal Year 2020: ¥43,290,000 (Direct Cost: ¥33,300,000、Indirect Cost: ¥9,990,000)
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Keywords | ナッジ / 医療 / 労働 / 教育 / 防犯 / 新型コロナウイルス感染症対策 / 防災 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、防災、教育、医療、労働、防犯などの政策現場で直面する問題について、アンケート調査、ランダム化比較試験(RCT)、経済実験という行動経済学の手法を用いて、その解決策を検討するものである。行動経済学的特性を利用することで、同じ情報であってもその提示方法を工夫すること(ナッジ)で人々の行動を、本人にも社会にもより望ましいものに変容させることができると考えられている。しかし、どのようなナッジが有効なのかは、地域、年齢、性別などの個人特性や文化特性に依存する。そのため、本研究では日本人の行動経済学的特性を明らかにした上で、様々な政策課題の解決に有効なナッジを見つけ出すことを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
医療の行動経済学の分野では、COVID-19感染対策促進の行動経済学的なメッセージの効果検証を複数行った(Sasaki, Kurokawa, Ohtake(2021,JER)、 Sasaki, Saito, Ohtake(2021,SS&M)、Tanaka, Nihonsugi, Ohtake, Haruno(2021, Sci Rep)。 その結果、感染対策には利他的利得メッセージが、高齢者のワクチン接種には利得フレームの社会的影響メッセージが効果的であった。また、Yamamura, Tsutsui(2022,JJIE)は、2020年3月から6月にかけてのCOVID-19緊急事態宣言の影響による個人の予防行動とメンタルヘルスの変化について分析した。Yamamura,Tsutsui(2021, J Popul Econ)は、COVID-19の対策として行われた学校の一斉休校が保護者のメンタルヘルスに与えた影響を分析した。さらに、風しん抗体検査受診を促進するためのナッジメッセージの効果検証を行った(加藤・佐々木・大竹(2022,RIETI DP))。妊婦に感染させると胎児の健康に悪影響がある可能性を示したメッセージが実際の抗体検査受検率を高めることを示した。 大竹・坂田・松尾(2020,行動経済学)は、豪雨災害時に早期避難を促すナッジメッセージの効果検証を行い、社会規範と避難行動の外部性を損失表現あるいは利得表現で伝えるメッセージが直後の避難意思形成に効果的であることを明らかにした。 小原・中山(2021、日本経済研究)は、RCTを用いて、情報提供が求職者の職域拡大につながるかを検証した。Lee, Ito, Kubota, Ohtake(2021, IJED)は、日本の公立小学校における幼少期の制服着用経験が、成人後の互恵的志向と不公平回避(向社会的)傾向を高めることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
行動経済学の政策応用として、医療、防災、防犯、労働、教育という多方面にわたる研究を行ってきた。行動経済学は、政策への応用が特に期待される分野である。中でも、日本におけるCOVID-19 の感染症対策は、個人への罰則を伴った行動規制が法的にできない状況で、行動経済学的なアプローチに頼ってきた。その意味で、COVID-19 の感染拡大は、本研究の緊急性と重要性を高めることになった。行動経済学の政策応用の中で、医療、教育、労働については、CODIV-19 に関する研究成果を数多く、早いタイミングで学術研究として発表することができた。社会科学系の研究で、短期間に多くの引用がなされることは稀であるが、本研究課題の成果の中には、発表後短期間に多くの研究で引用されたものがある。特に、COVID-19 の影響について毎月個人追跡調査を行っているものは、貴重なデータベースとなっている。また、ワクチン接種についても意向調査だけでなく、同一個人を追跡し、ワクチン接種行動についても把握している。これらのデータベースから既に多くの研究成果を生み出しているが、これからも多くの研究成果を生み出すことが期待される。社会科学系の研究では、個人の特性の影響と政策や環境の影響を分離して把握することが困難なことが多い。しかし、COVID-19 の感染拡大という非常に大きなショックは、政策や環境のショックが大きく、地域的なショックの差もあるため、政策効果や環境の変化の影響を分析することが可能になる。したがって、行動経済学の政策応用について、想定を超える研究の進展があり、今後も期待以上の成果が見込まれると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
医療の行動経済学においては、COVID-19に関わる行動経済学的研究を継続する。ワクチン接種に関する接種意欲と接種行動についての調査と研究を行う。同時に、これまで行った調査やオンラインRCTの結果を論文化する。医療者に抗菌薬を適正に使用することを促すナッジメッセージの試行的分析を開始する。 防災の行動経済学においては、避難行動を呼びかけるメッセージの効果について、就業状態に着目した異質性の分析を行う。まず、広島県で行ったRCTのデータを再分析し、効果の異質性を検証する。その次に、全国ベースのオンラインRCTを行い、避難行動に効果的なメッセージについて研究し、地域や就業状態などで異質性が存在するか否かを検証する。 防犯の行動経済学においては、2021年度から行っている特殊詐欺対策の警察署との共同での介入研究を継続し、その結果をまとめ論文化する。 労働の行動経済学においては、COVID-19がテレワークの実施に与えた長期的影響について、JILPTの個人追跡調査を用いた分析を行う。また、COVID-19の感染が収まってきた段階で、従業員の喫煙率低下政策、健康増進政策についてのRCTを行う。効果測定には、主観的指標に加えて、ストレスホルモンであるコルチゾールの変動を用いる。この他に、2022年度と2023年度の2年度において、オキシトシが競争選好および信頼に与える影響を女性の被験者を対象に行う。 教育の行動経済学においては、2020年の全国一斉休校および2021年度のCOVID-19の第6波の流行による学級閉鎖が学力および非認知能力に与えた影響について、奈良市および尼崎市のデータを用いて分析を行う。また、2021年度から行っている尼崎市公立保育所6所に積み木と付属品のセットの導入と積み木の使い方の職員への研修がECERSの評価に与える影響については、引き続き効果検証を続ける。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A+: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, more progress has been made in research than expected.
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