Project/Area Number |
20H05675
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section E
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
深瀬 浩一 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (80192722)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樺山 一哉 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 教授 (00399974)
真鍋 良幸 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (00632093)
三善 英知 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20322183)
下山 敦史 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (90625055)
|
Project Period (FY) |
2020-08-31 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
|
Budget Amount *help |
¥200,590,000 (Direct Cost: ¥154,300,000、Indirect Cost: ¥46,290,000)
Fiscal Year 2024: ¥28,990,000 (Direct Cost: ¥22,300,000、Indirect Cost: ¥6,690,000)
Fiscal Year 2023: ¥28,990,000 (Direct Cost: ¥22,300,000、Indirect Cost: ¥6,690,000)
Fiscal Year 2022: ¥27,950,000 (Direct Cost: ¥21,500,000、Indirect Cost: ¥6,450,000)
Fiscal Year 2021: ¥27,950,000 (Direct Cost: ¥21,500,000、Indirect Cost: ¥6,450,000)
Fiscal Year 2020: ¥86,710,000 (Direct Cost: ¥66,700,000、Indirect Cost: ¥20,010,000)
|
Keywords | 糖鎖 / 免疫 / ワクチン / 複合化 / 糖鎖合成 / 核医学 / 複合糖質 / リピドA |
Outline of Research at the Start |
自己と非自己の認識は生体防御の根幹をなすものであり、脊椎動物においては獲得免疫と自然免疫からなる精緻な機構が自己と非自己の認識を担っている。糖鎖は細胞表層を覆っており、様々な認識に関与するため、獲得免疫と自然免疫の両方において自己と非自己の認識の鍵物質として機能している。 本研究では、研究対象を自己由来糖鎖にまで拡大し、自己ならびに非自己糖鎖を利用した免疫制御法の開発を目指し、免疫制御機能を有する糖鎖の合成研究と自然免疫受容体や糖鎖認識タンパク質と糖鎖との相互作用解析研究を行う。
|
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、細菌由来自然免疫刺激糖鎖の構造と合成研究を行い、合成糖鎖を用いて糖鎖による免疫活性化と炎症惹起機構を明らかにしてきた。また生体由来の糖鎖を利用した新たな免疫調節法の開発を目指し、生体内からコアフコース認識レクチンを初めて見出す等の成果を上げた。本研究では、化学的手法と生物学的手法を統合した合成生物学手法により、新たな糖鎖認識分子を明らかにし、炎症や免疫応答における糖鎖の新機能を解明する。次に、以上の基礎研究の成果を、免疫アジュバントの開発、免疫アジュバントと抗原の複合体からなるがんワクチンの開発、炎症性疾患の制御分子としての糖鎖生合成阻害剤の開発、新規ながん免疫療法の開発などの応用展開に結びつける。さらにα線核医学治療などの放射線療法と併用することにより、炎症性腸疾患や膵臓がんなどの難治性疾患の治療法を開発することを目的とする。 1) N-グリカンの免疫制御機構の解析とその利用:本研究では、以下の項目を実施する。1-1)Fut8阻害剤の探索とそれらの分子標的薬化、1-2)T細胞を標的とする炎症性腸疾患治療薬の開発、1-3)デクチン-1を介したコアフコース認識の解析と新規コアフコース認識タンパク質の探索、1-4)糖鎖認識を基盤にした新規ながんの分子標的薬の創製。本年度、の特筆すべき成果として、開発したFut8阻害剤がin vivoにおいても機能し、T細胞の活性や肝臓の繊維化を制御することを示した。 2) 細菌由来複合糖質の免疫制御機構の解析とその利用:以下の項目を実施する。2-1)免疫アジュバントの開発、2-2)アジュバント-がん抗原複合体のがんワクチンへの適用。本年は、有望な粘膜アジュバント候補として見いだしたパイエル板共生菌リピドAの構造活性相関研究を進めた。またアジュバントとがん抗原を組み込んだリポソームワクチン、エンベロープウイルスレプリカワクチンを開発した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の肝は,Fut8阻害剤、N-グリカン、リピドAといった中分子化合物である。そのためには、これらの化合物の安定供給が必須であり、その合成が極めて重要である。一方で、これらの腹蔵構造を持つ化合物の合成には大きな困難が伴い、時間、労力もかかる。これまでに、それぞれの化合物に関して、その誘導体も含めて、網羅的にかつ量的供給が可能な合成ルートを構築してきた。例えば、N-グリカンに関しては、精密条件下でのスケールアップが可能なマイクロフロー反応を有効に利用し、中間体となるフラグメント(2-4糖構造)を10 g以上のスケールで合成した。また、グリコシル化反応でのエーテル溶媒による反応中間体の安定化や、アミド(‐NHAc)のイミド(‐NAc2)保護による反応性向上の効果を見出した。これらの検討の結果、複数のN-グリカンの合成を達成し、本年度も、本手法で複数のN-グリカン、O-グリカンの合成を達成した。加えて、リピドAに関しても効率的合成法を確立しており、量的供給を可能にするとともに、10種の共生菌リピドAライブラリを構築し、アジュバント機能の分子基盤を解析した。 上記で合成した分子群の生物活性評価も積極的に進めている。Fut8阻害剤に関しては、マウスにおいてT細胞の活性を制御できること、肝臓の繊維化を抑制できることを示した。また、合成糖鎖を生細胞表面に提示する手法を確立した。またリピドAに関しては、細胞レベルでの機能評価に加え、粘膜ワクチンアジュバントとして有望であることをin vivoでの実験によっても示し、さらには、そのメカニズム解明も進めた。 加えて,α-線を用いた新規核医学療法に関しても検討を進めた。複数のα-線標識分子標的薬を合成し、マウスに投与した。何れの化合物も高い抗がん活性を示し、本手法の有効性を明確に示すことができた。さらに、医師主導治験も開始し、順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
自己と非自己の認識は生体防御の根幹をなすものであり、脊椎動物においては獲得免疫と自然免疫からなる精緻な機構が自己と非自己の認識を担っている。糖鎖は細胞表層を覆っており、様々な認識に関与するため、獲得免疫と自然免疫の両方において自己と非自己の認識の鍵物質として機能している。糖鎖は構造上の多様性や不均一性を特徴とし、しばしば複数の活性ユニットを含むため、分子レベルで構造に基づいた生物機能解析は容易ではない。 本研究では、研究対象を自己由来糖鎖にまで拡大し、自己ならびに非自己糖鎖を利用した免疫制御法の開発を目指し、免疫制御機能を有する糖鎖の合成研究と自然免疫受容体や糖鎖認識タンパク質と糖鎖との相互作用解析研究を行う。自己糖鎖としてはアスパラギン結合型糖タンパク質糖鎖( N-グリカン )を、非自己糖鎖としては細菌由来複合糖質を主な対象として、それらの免疫制御機構を解析する。さらに糖鎖を利用した免疫ならびに炎症制御法を開発し、がんならびに炎症性疾患を対象にして、がんワクチンや糖転移酵素阻害剤など、糖鎖を基盤とする免疫制御分子の開発を目指す。 多くの天然糖鎖は、複数の活性ユニットを有することから、それぞれのユニットが同時あるいは経時的に認識イベントに関わることにより、より高次の認識や細胞制御が可能である。合成糖鎖の場合も、活性ユニットを複合化した再構築モデルを用いることで、より高次の機能分子とすることができる。例えば、複数の糖鎖をクラスター化した糖鎖デンドリマーでは、多価の糖鎖認識タンパク質であるレクチンとの間で強固な相互作用を形成できる。本研究では、糖鎖デンドリマー、糖鎖ナノ粒子、糖鎖-ペプチド複合体などの糖鎖再構築モデルを用いることで、優れた免疫応答を誘導できる実用的がんワクチンや新規ながん標的分子を開発する。
|
Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
|