Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
地球温暖化による気温の上昇は、イネに高温不稔を引き起こし、収量を大きく低下させる要因となる。この高温不稔は早急に解決すべき極めて深刻な問題であるにもかかわらず、これまでの研究の多くは葯レベルの解析にとどまっており、花粉粒レベルでの詳細な調査が必要とされている。また近年、追肥によってイネの高温不稔が抑制される事が報告されているが、そのメカニズムは調査されていない。本研究では、細胞メタボロミクス解析と透過型電子顕微鏡観察によって細胞レベルでの生理と形態を、安定同位体のトレーサー実験によって炭素・窒素の輸送特性を解明し、高温不稔の発生および抑制の原因となる新規のメカニズムを明らかにする。
気温の上昇は、イネに高温不稔を引き起こし,収量を大きく低下させる要因となる.しかし,これまでの高温不稔抑制メカニズムの研究はその多くが葯レベルの解析にとどまっており,花粉と葯の現象を分離できていない.また近年,開花期の高温に強い耐性を持つとされ,高温不稔の研究に広く用いられてきた「N22」よりもさらに高い高温耐性を持つ水稲品種が選定された.そのため,今後はそれらの品種を用いる事で,高温不稔の発生,抑制メカニズムの解明がより進展すると期待される.本研究では,開花期高温に強い水稲品種「N22」と高温に弱い「ヒノヒカリ」に加え,「N22」以上の高温耐性を持つ水稲品種「Kalheenati」および「宝満神田稲」を供試材料とし,開花直前の花粉粒および柱頭細胞を対象にピコリットル・プレッシャープロー ブ・エレクトロスプレーイオン化質量分析法(picoPPESI-MS)によって代謝産物分析を行った.その結果,糖,有機酸,アミノ酸,脂質等200ほどの代謝産物を1細胞レベルで検出,同定する事に成功した.またそれらの代謝産物の中で,高温耐性に関与すると思われる代謝産物をいくつか見出した.さらに,高温不稔を抑制する栽培技術の開発を目指し,圃場で育成したイネを用い,窒素追肥時期の違いが高温不稔発生に与える影響を調査した.その結果,追肥によって高温不稔が抑制されること,出穂10日および20日前の追肥が特に有効であることが示唆された.これらの知見から,窒素追肥による高温不稔抑制技術の開発が期待される.
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
All 2022 2021
All Journal Article (4 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 3 results) Presentation (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results)
Environmental and Experimental Botany
Volume: 188 Pages: 104515-104515
10.1016/j.envexpbot.2021.104515
Horticulture Research
Volume: 8 Issue: 1 Pages: 1-15
10.1038/s41438-021-00603-1
Journal of Plant Research
Volume: 135 Issue: 1 Pages: 15-27
10.1007/s10265-021-01346-9
Scientific Reports
Volume: 11 Issue: 1 Pages: 4447-4447
10.1038/s41598-021-83870-1