Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
本研究は、時間生物学と進化生態学を統合し、社会性動物における生物時計の解明をめざす。生物のさまざまな行動は、約24時間周期で変動する。その日周リズムは、内的な生物時計によって生み出され、昼夜のサイクルに適応した生理システムである。近年、社会性昆虫では、社会的相互作用によって日周リズムが柔軟に変化することが明らかとなった。しかし、どのような仕組みで、社会的要因が日周リズムを制御するのかはほとんどわかっていない。本研究では、トゲオオハリアリを用いて、社会的相互作用による柔軟な概日活動リズムを生み出す生理機構を解明する。
生物は、昼夜のサイクルに合わせた約24時間周期の概日リズムを備えている。概日リズムは、光など環境の影響を強く受けるが、動物社会における集団採餌など協力行動のために、社会的制御も重要である。社会性昆虫は、集団での役割分担など社会的状況が多様で、個体間相互作用による影響を受けやすく、生物時計の社会的制御機構を解明するのに適した材料である。本研究では、アリ類を用いて、アリの生態と概日活動リズムとの関係性を明らかにすること、概日リズムを生み出す生物時計の生理機構の解明を目的に研究を行った。野外では、光や温度など環境要因と種間相互作用などの生物的要因が複雑に絡み合いながら、生物時計を制御している。つまり、それぞれの種は、周辺の外的環境に合わせて、多様な概日活動リズムを示すと考えられる。アリ類は日本国内に300種弱生息し、それぞれが多様な生態を持っているが、野外での概日リズムの報告が限られているため、生態と概日活動リズムとの関係性を予測することは現状では難しい。野外環境での生物時計の適応的意義を解明するために、複数種の概日リズムを調べ、その知見を蓄積することが重要である。本研究では、本州に生息する数種類のアリで活動リズムの測定を行った。いくつかの種では、概日活動活動性の強さに、種間差やカースト間での差があることが明らかとなった。個体間相互作用による柔軟な概日活動リズムを生み出す生理機構を解明するため、トゲオオハリアリ(Diacamma cf.indicum from Japan)を材料に、個体間相互作用などの社会的要因から単離し、概日活動リズムを示す単独条件と、常時活動性を示す幼虫と同居させた育児条件で、ワーカーの時計遺伝子の発現振動の有無と概日活動リズムの有無が一致するのかを調べた。現在は、論文化の準備をしている。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Royal Society Open Science
Volume: 8 Issue: 1 Pages: 201637-201637
10.1098/rsos.201637