Outline of Annual Research Achievements |
研究目的の1つであるガンマ線信号に対する感度については、発光の波形をもちいた粒子識別に加え、新たな手法の開発を実施した。これは検出器に使われている約600本の光センサーの応答パターンから一つの事象の中でいくつのガンマ線が生じたかを判別できるものである。この開発した手法はまだ物理解析には使われていないが、XMASS検出器ではニュートリノを出さない二重ベータ崩壊の探索で関心のある2-3 MeVの領域で検出器の外側から入ってくるガンマ線とそれ以外を区別するのに有効であることが確認された。この技術は今後さらに改善することでこのエネルギー周辺の物理探索の感度を向上させることが見込まれる。キセノン124の「ニュートリノを出さずに陽電子放出と電子捕獲を同時に起こす反応」についてはXMASSにおける初めての高エネルギーでの探索であり、詳細な調査を要するためまだ結果を出すには至っていないが、このエネルギー領域での検出器の安定性の評価や、主な系統誤差の評価はすでに終えており、あとはエネルギーの非線形性を評価できれば最終的な結果を得られると見ている。 一方で次世代の液体キセノンを用いた検出器開発については、液体キセノンへの不純物混入を防ぐために石英容器で液体キセノン領域を囲っても、現在主流の二相型検出器(電場を印加することで電子をドリフトさせ、液中と気体中で発光を起こし、粒子識別を行うもの)が構成できることを小型の装置によって確認した。この結果は論文としてまとめられ、既にpublishされている( K. Sato, (6名省略), Takumi Suzuki, Rina Yamazaki, PTEP, Vol. 2020, Issue 11, November 2020, 113H02 )。現在は、検出器の不純物遮蔽能力の評価に申請者の開発したラドン発生装置が使われている。
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