An Empirical Research on the Role of Labels in the Structure of Language
Project/Area Number |
20J11905
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 02060:Linguistics-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 愼将 九州大学, 人文科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2020: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 英語学 / 言語学 / 生成文法 / ラベル / インターフェイス解釈 / wh疑問文 / 主要部内在型関係節 |
Outline of Research at the Start |
生成文法で仮定されている人間言語の階層的な統語構造は、二つの単語や句を組み合わせてより大きな構成素を作る併合操作で作られるとされ、併合の際、組み合わされた要素の一方がラベルとなることで、全体の特性を決定すると考えられている。Chomsky (2013, 2015) はラベルを決定するためのアルゴリズムを提唱し、ラベルが決まらない構造は不適格とされる。 ラベルは音韻部門、意味部門が構造を解釈するために必要とされるが、どのようにラベルが解釈に寄与するのかについては研究がなされていない。本研究は、ラベルが解釈上果たす具体的な役割を様々な構文を通じて明らかにする研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
人間言語の階層構造には、要素が全体の特性を決める内心性が生成文法初期より観察されてきた。Chomsky (2013, 2015) のラベル理論では、構造中の要素が全体のラベルとして機能すると考えることで言語の内心的特性が説明された。しかし、これまでの「投射」に替わる概念である「ラベル」は、解釈システムである概念・意図インターフェイス及び感覚運動インターフェイスでの解釈に必要だとされるが、具体的にどのような形でラベルが解釈に寄与するのかは明らかにされていなかった。 この問題意識のもと、本研究では併合が作り出す集合構造は、集合と要素の包含関係を基準に解釈されることを提案した。集合はラベルによって特徴づけられているため、集合に含まれる要素はラベルの情報を用いて解釈されると考え、インターフェイスにおいて、ラベルの情報が、語彙要素の持つ値が設定されていない素性の解釈を保証することを提案した。 具体的には、1. 英語における、元位置にwh演算子がとどまるwh疑問文のスコープ及び疑問解釈に対しラベルの観点から新たな提案を行い、日英語のwh演算子の移動の義務性のパラメーターを語彙特性とラベルにより説明した。2. 統語要素がラベルを提供するかどうかに関する構造上の位置の違いに基づき、ラベルに従った解釈の義務性が異なると提案し、wh演算子の義務的/随意的スコープを説明するとともに、同様のメカニズムが名詞要素に対する格付与にも適用されうることを示した。3. 値の無い素性に値を与える以外に、述語による項の選択は述語ラベルが行うと考えることにより、述語と項の隣接性が前提とされている従来の枠組みでは問題となる日本語の主要部内在型関係節における長距離選択現象をラベルと包含関係から説明する可能性を提示した。 これらの成果は、国内外での研究発表5本と研究論文2本 (いずれも査読有) として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、wh疑問文と主要部内在型関係節におけるラベルの役割に着目した研究を行った。本研究では集合とラベル付与の観点から新たな局所性概念を提案し、それに基づきwh疑問文のスコープ現象に加え、wh島の条件、基準凍結効果に対する新たな提案を行った。また、日英語の比較研究により、Cheng (1997) が観察した類型論的条件に対する原理的な説明を行った。主要部内在型関係節については、本研究の採択する仮設群から、これまでは記述的観察に過ぎなかった関連性条件と呼ばれる語用論的条件をフェイズの解釈条件から引き出す新たな提案を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は研究代表者の就職により今年度が最終年度となったが、今後の研究としては感覚運動インターフェイスにおける外在化への影響を探る予定である。wh疑問文に対して提案した集合に基づく新たな局所性が名詞表現の持つ格にも適用されうることが明らかになったため、今後は一致現象及び格付与の研究を進める。具体的には、一致形態が豊富とされるバントゥー諸語の一致は主要部-指定部関係になければならず、英語のように長距離一致を許さないことが知られているが (Carstens (2005))、この振る舞いは本研究で採択する一致メカニズム及び本研究の提案する局所性から説明されうると考えられる。従って、今後はバントゥー諸語をはじめとした幅広い言語の一致及び格付与現象を考察することで、本研究の提案の妥当性を検証する。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)